活躍の場を舞台、ドラマ、バラエティに
ところが伝説の大女優はそうではなかった。活動期間こそ例に漏れず短いが、活躍の場を外に見出した。舞台やテレビドラマ、バラエティなどへ出演し、アダルトビデオファンのみならず一般層にまでその存在が知れ渡っていった。当時の押しも押されもせぬ及川奈央の人気について、前出のライターはこう語る。
「芸能界やスポーツ界にもファンが多くいましたからね。特に有名なのが福山雅治さんです。かつてレギュラーを持っていたラジオ番組でもAV女優のファンであることを公言していましたが、なかでも一番のお気に入りが及川さん。事務所の先輩であるサザンの桑田佳祐さんの誕生日プレゼントに、及川さんの出演作をプレゼントしたという逸話は有名です」
引退後の及川が特に関心を向けたのは舞台の世界だった。2004年に吉本興行の「チェックメイト」で初めて舞台に立ち、2007年に「ナイトメス」で舞台初主演を経験する。
「及川さんを舞台の世界に誘ったのは『ナイトメス』で演出を務めた梶研吾氏です。及川さんはあれだけの美貌を持っているので、舞台で映える何かを感じたのでしょう。実はAV女優が舞台に進出することは珍しいことではなく、現役時代から二足のわらじを履いている人もいます。ただ、小さな公演ばかりで短命に終わってしまうケースが多いことと比べると、及川さんの“転身”は見事なものです」（劇場関係者）
「元女優」の飛躍の道を開いた功績
さらに、及川にとって意外な出演オファーが舞い込む。それは子供向けの特撮戦隊ヒーロー作品への出演だった。
「出演したのは2008年放送の『炎神戦隊ゴーオンジャー』。及川さんが演じたのはケガレシアという悪役でした。語尾に『～でおじゃる』を付けるコミカルなキャラがウケて子供たちの間でも人気だったようです。テレビシリーズが終わった後も映画で登場し、10年にわたって及川さんはケガレシアを演じることになりました。2010年には福山雅治さん主演の大河ドラマ『龍馬伝』にも出演し、NHKにもお墨付きをもらっている。元AV女優だからという理由で彼女のキャスティングを避けるという空気は、もうとっくにありませんよ」（テレビ局関係者）
プライベートでは2016年に一般男性と結婚。ハワイでの挙式の様子を嬉々としてブログにアップしていた。しかし、その結婚生活も5年という短さで終わりを迎えてしまう。
「2021年に及川さんはツイッターで離婚を発表しました。とはいえ本人に悲壮感はなく、『彼には心から感謝の気持ちです』と円満離婚だったようです。その後も今年3月のWBCでも東京ドームでグラビアアイドルの相川友希と応援する様子をインスタに挙げたりと、お一人様の生活を満喫しているみたいですよ」（前出・スポーツ紙記者）
現在、及川は自身のSNSに加え、YouTubeでも動画を投稿している。無論、動画の内容は穏当なもの。20年前を知るファンからすれば少し寂しい思いがしなくもない。
だが、「元AV女優」というかつては冷遇された肩書を持つ人間でも、本人次第でいかようにも飛躍できることを身を以って示し、後進にも道を開いた彼女の功績は、どれだけ称えても称え足りない。
