警察が個人情報を特定し、自殺リスクのある男性を保護したケースも
こうした自殺配信に対する対策としては、プロバイダ等への協力体制がある。「インターネット上の自殺予告事案への対応に関するガイドライン」(2005年10月作成)によると、インターネットユーザーやサイト管理者、違法有害情報の通報を受け付けている「インターネット・ホットライン・センター」(IHC)などから警察が認知した場合、発信者を特定するため、警察はプロバイダ等へ協力依頼をする。特定できた場合、発信者宅などへ行き、人命救助をする。
「相談してきた男性の自殺リスクが高まった際、警察に通報したことがあります。個人情報を特定した警察が男性宅に向かい、保護したケースがありました」(NPO関係者)
ちなみに、IHCによると、2021年中に寄せられた「自殺誘引等情報」2611件のうち、2199件の削除依頼を行なっている。そのうち、942件(42.8%)が削除された。
「市販薬」に依存する10代が徐々に増加
また、最近の自殺配信で共通するのは、市販薬の過量摂取が関係していることだ。今回の松戸市の事案でも、直前にアルコールを飲みながら、市販薬などを過量摂取した疑いがある。筆者の取材でも、類似の自殺や自殺未遂、自傷行為をしている若年層がいる。
「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2022年9~10月調査、2468人)」によると、10代の薬物依存患者(46人)のうち、「主たる薬物」の65.2%が、風邪薬や鎮痛剤、咳止め薬などの「市販薬」だ。2014年の調査では「市販薬」はゼロだったが、その後徐々に増加。2020年調査の段階で「市販薬」が56.4%と半数を超えた。
今回の2人の女子高生が自殺したときも、直前に市販薬や処方薬をアルコール飲料で飲んだと思われる写真がTwitterでアップされていた。「実態調査」に関わった、精神科医の松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部)はこう推測する。
「市販薬による高揚、興奮、もしかすると現実感喪失や幻覚が、アルコールの作用によって強まり、死に対する恐怖感がなくなり、あのような行動を促したと思われます」