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まさかの初舞台、そして…

 芸人というか、まだNSC生ではあるが、初舞台が人気番組の正月スペシャルというのはヤバ過ぎた。

 さらに僕にプレッシャーを掛けるかのように、お客さんが並んで座っている客席の最前列に、母と新しい父、弟がいた。家族も僕には秘密にしていた。みんな、言ってよぉ。

 家族には一度もネタを見せたことがなかった。もういろいろあり過ぎて僕の脳はショートしかけていた。緊張も通り越した無の境地だった。披露したのは、何回も相方とネタ合わせをしていたPerfumeさんのネタだったので、ネタを飛ばすこともなく、観覧のプロといってもおかしくないようなお客さんの力強い笑い声のおかげで、とても気持ちよくできた気がする。今見たら全然面白くないと思うが。

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 ネタを披露した後、トークコーナーもあり、高校時代に将来芸人になると決意したときに書いたノートなどが自宅から押収されて披露され、とても恥ずかしい気持ちになった。その一方で、初めてスタジオ収録というものに参加できた嬉しさみたいなものも、終わり間際には感じられるようになった。

 でも今回は芸人としてテレビに出たのではなく、一般人として自分は呼ばれたという認識だったから、これはノーカウントだと思った。収録終わりで、家族と会って話もできたし、中学のときの相方にも会えたので、最終的には良い一日だったなと思えた。

 でもそれは本当にその日だけだった。

 この番組のために特別授業だと言われ、参加してくれた同期達。こんな奴いたっけレベルの僕のために時間を浪費させられたことに対する怒りと、「『田舎に泊まろう!』に出たからって調子に乗んなよ」的な、直接は言われないけど陰の圧力みたいなものを感じるようになった。

 本当はそんなことなかったかもしれないが、自分と同期の距離がどんどん離れていく感覚になった。「田舎に泊まろう!」により、またしても高校のときと同じようなことになってしまった。

 着実に面白くなっていく同期達。運だけで、ちょっと早めにテレビに出ただけの男。雲泥の差があった。

 それでも、テレビでにらたまを知ってもらえるチャンスがあったし、これからの活動に少なからず良い影響はあるだろうと思っていた。NSC卒業までまだ時間はあった。これから頑張っていこう。そう思っていたときに相方に言われた。

「俺、NSC辞めるわ」