2日後にあるネタ見せで、ネタをやろうと話をしていたが、その当日に連絡があり、「コンビを解散したい」と言われた。まだネタ合わせすらやっていなかった。彼はその日のネタ見せで、ピンでネタをやっていた。フレンズは消滅した。
それから、別の人とコンビを組むことになったが、皆自分と同じで誰ともコンビを組めずにネタ見せができないでいた人達だった。お互い余り物感があって、同じクラスの人達とも親しくできないまま2人でネタ合わせをほぼ毎日繰り返した。
ネタ合わせをたくさんして、ネタ見せでやっと講師の人や同期にネタを見てもらう。でも、全くウケない。それで自信をなくし、相方はNSCを去っていき、また自分は一人になり、また誰かとコンビを組むということを繰り返していた。6人くらいの人とコンビを組んだが、誰とも長続きしなかった。
最後に組んだ相方は、すでに小説を何冊も出版している作家の人で、芸人になるつもりはなく、NSCに通ったという経歴とネタ探しのために来ていた。でも、一番一緒にいて楽しかったし、心を許せる相方だった。お互いの好きな食べ物を組み合わせたコンビ名にしようということになり、僕はそのときお金がなさ過ぎて毎日たまごかけごはんを食べていたので、「たまご」にして相方は「にら」が好きということで、「にらたま」というコンビ名になった。
僕が書いたネタを面白いといつも言ってくれた。ネタ見せの授業で僕がPerfumeさんのダンスを踊るコントをやり出したら、講師の先生にも徐々にだが、評価してもらえるようになってきた。
やっと自分もきっかけを摑つかみ出したと思ったその矢先だった。
レギュラー松本さんとの再会
ある日突然、NSCの特別授業でレギュラー松本さんがいらっしゃるということになり、全生徒が教室に集められた。特別授業に出席しないとクビになると言われていたので、みんなバイトやいろんな予定をキャンセルして、授業に出席したに違いない。
僕もみんなと同じくクビにならないために特別授業に出席した。講師がレギュラー松本さんということで、僕は「田舎に泊まろう!」で出会って以来、4年ぶりにお会いできることになったのだが、初めて会ったときとは立場が違うし、松本さんが一度会ったきりの一般人のことを覚えている訳がないだろうし、挨拶をしたほうがいいのか、初対面の感じでいけばいいのかすごく悩んでいた。
もし、松本さんが僕のことを奇跡的に覚えていて、僕が挨拶にいかなかったらクビになるかもしれないという不安でいっぱいの中、松本さんの特別授業が始まった。
松本さんがお笑いの仕組みを神妙な面持ちで教えてくださっている間、松本さんの近くにカメラがあることに気づいた。今日の特別授業はどこかで放送されるのかもしれない。もしも僕の首が俯いて見える角度で撮られてしまい、それをNSCの偉い方が見たら、居眠りをしていると勘違いされてクビになるんじゃないかという新たな不安も生まれてしまった。
こうなったら一瞬たりとも松本さんを見逃さないように、追尾機能があるペットカメラのような動きで松本さんを凝視しながら早く授業が終わるようにと願った。
たまにカメラが僕を撮っているような感覚になる。やばい、松本さんを全力で見過ぎてカメラマンさんに目をつけられてしまったのかもしれない。松本さんを凝視していじっていると判断されてしまったのか? 最悪だ。僕はもうクビかもしれない……。
そんなことを思っていた瞬間、教室のドアがバッと開いた。