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「自分を守る防御力を上げなきゃいけなかった」卵巣摘出、結婚の破談…セーラームーン役・三石琴乃の“波乱万丈すぎる人生”

「自分を守る防御力を上げなきゃいけなかった」卵巣摘出、結婚の破談…セーラームーン役・三石琴乃の“波乱万丈すぎる人生”

CDB

2023/05/04
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 92年から97年に放映されたセーラームーンと、95年から96年のエヴァンゲリオン。90年代中盤から後半にかけて社会現象を巻き起こした代表作に出演した期間、三石琴乃は卵巣の片方を摘出する手術の傷跡と、「転んで宝物をすべて地面にばらまいてしまったよう」とのちに語る、私生活での精神的喪失感を抱えながら演じていたことになる。

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「自分を守る防御力を上げなきゃいけなかった」

 三石琴乃がかつて語ったもうひとつのことは、90年代の声優ブームの中で経験したストーカー被害のことだ。2017年に刊行されたムック本『声優プレミアム』のインタビューの中で、三石琴乃は、エヴァの後の声優ブームの中で「一人暮らしのアパートまでスタジオからつけられたこともあったし、事務所に穏やかでない手紙が来たりもしました」「事務所は24時間守ってくれないので、仕事場以外で自分を守る防御力を上げなきゃいけなかったんです」と語る。

 その経験は、同時代の女性声優の多くが共有する経験だ。『新世紀エヴァンゲリオン』の洞木ヒカリ役で三石琴乃と共演した岩男潤子もまた、自伝エッセイ『voice─声のツバサ─』の中で、「自宅前にはいつも誰かが待っていた」という激しいストーカー被害について、また声優になる前のアイドルグループ時代に経験した、写真撮影の中で脱ぐよう、半ば強制されそうになった経験について語っている。

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 最新エッセイ『ことのは』の中で三石琴乃は、90年代のストーカー被害について語っていない。その代わりに養成所時代、当時、声優としても活躍していた講師から生徒として不平等な扱いを受けたこと、しばしば講師と生徒の間に生じる権力の中で「不適切な関係」を目にしたことを書き留めている。

「これから声優を目指そうと思われている方にとっては、あまり聞きたくない話だったかもしれません。ただ今後運悪く不平等な状況に出くわすかもしれない。理不尽で怒りが込み上げ、嫌悪感を抱くことがあるかもしれない。パワハラ・セクハラからは自分で自分の身を守らなくてはいけない。何か一人で解決できない時は、誰かに相談して吐き出してください」と語る。

アイドル声優として「業界をぶち壊した」には…

『ことのは』の中で三石琴乃は、「また一方で(三石琴乃たちの世代が)『この業界をぶち壊した世代』とおっしゃる方もいました。(中略)意図していなかったとは言え、たしかにそうした功罪を生んでしまったのかもしれません」と書く。それはアイドル声優第一世代としての複雑な心境を吐露した言葉だ。

 だが、三石琴乃や岩男潤子たちのインタビューを読みながら感じるのは、そうしたアイドル声優第一世代だからこそ、アイドルとして消費されることの傷や痛みの感覚もまた彼女たちの中に深く根ざしていることだ。