「今年1月のある日の昼下がり、警察の方が2人自宅にやってきて『昨年11月にSNSで入手した動画について聞きたい』と言ってきたんです。ぎょっとしましたよ。私がやりとりしていたとあるアカウントに関する“詐欺”の捜査だったようで、どうやって連絡したのか、どうやってお金を払ったのかを聞かれて、素直に答えました。その時思ったのは、僕が購入したのは素人の流出動画で、このまま逮捕されてしまうんじゃないかということでした」(山口さん 60歳・仮名)

山口さん

 文春オンラインがこれまで2回に分けて報じてきた「選手権アカウント」による性被害問題(#1#2)。「選手権アカウント」とは、「巨乳」「コスプレ」などのキーワードで関連する動画の投稿を促すアカウントである。テーマに沿った動画が多数リプライされ、市販のAV作品の切り抜きに混ざって、素人女性の性行為が撮影された流出動画も多く含まれている。

 しかし、当然ながら素人女性の流出動画や未成年の動画をこうしたサイトを通じて「買った」場合には法に問われる可能性がある。冒頭の山口さんも安易な気持ちから「選手権」動画に手を出し、危うく逮捕されそうになった経験を持つ人物だ。今回はそうした「選手権」動画の落とし穴について伝える――。

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「Twitterでエロ動画を買うのが人生最大の楽しみ」という中年男性

 セックス中に撮影された動画がSNSで流出して、涙を吞む女性が後を絶たない。Twitterなどでは「PayPayで500円」などと流出動画が販売されているケースも多い。

 売る人がいるということは、買う人もいる。「Twitterでエロ動画を買うのが人生の最大の楽しみだった」と話す山口さんもその1人だ。

動画流出を促す「選手権」アカウントの1つ

 山口さんの自宅は練馬区にある築41年の2階建アパート。家賃は3万9000円で、最寄り駅からは徒歩22分。太宰治に憧れて小説家を目指したが挫折し、27歳の時に運送会社に就職。そのまま定年まで勤め上げ、退職後は生活費を賄うためにタクシーの運転手として働いている。

 山口さんに結婚歴はなく、現在も1人で暮らしている。“モテ”とは無縁の人生だが、執着は今も残っているという。

「僕ね、1回だけモテ期があったんですよ。小学校6年生の頃は足が速くて、人見知りなだけなのを“クールだ”って言ってモテました。同級生に告白されてね。手も繋いでないしキスもしてないけど、あの瞬間は鮮明に覚えてます。告白された子の名前、まだ覚えてますよ。山口百恵さんにちょっと似ててね。でもあれが人生のピークでした」