高齢者は弱者なのか…
あたためるだけで食べられるハンバーグとおでん、チルドの焼きそばとうどん、バナナと5個入りのバターロールを2袋、1種類のみ置いてあったヨーグルトと牛乳を購入し帰宅。要した時間は2時間45分。それでも、スーパーにまで辿り着けない人や、未だに停電中の家庭を考えればありがたいなんてものではない。
これで、4、5日持ち堪えることができるだろう。
買ってきた食品を冷蔵庫へしまっていると、
「ほっつき歩いてる暇があったら、早く電気屋に電話しろ!」
老父がかみついてくる。
ほっつき歩いていたとは聞き捨てならない。
「何度言ったらわかるの? ウチはたまたま電気が通ったけど、千葉県中がまだ停電してるんだよ。食べ物を確保するのだって本当に大変なんだから、少しは大人しくしててくれる!」
分からず屋のクソじじいに関わったところで時間の無駄。言うべきことだけを言うと、
「早く電気屋へ電話しろって言ってるのが聞こえねーのか。早く直してもらわねーと相撲が観られねーだろ」
懲りずに怒鳴り続けている老父を無視して2階へ駆け上がった。
世の中が大変な状況に陥っていようがいまいが、自分のことしか考えていないのは、何も老父だけではない。
「このヨーグルトおいしくない」
翌朝、階下へ下りていくと、ロールパンを頰張っていた老母が宣った。
はあ……。今、何とおっしゃいました?
このヨーグルトを手に入れるために私が要した労力がどれほどだったかを、この人は全くわかっていない。
「そうですか。おいしくありませんか? だったら無理して食べていただかなくても結構ですから」
嫌みたっぷりに言って溜飲を下げる。
「緊急時、高齢者などの弱者が取り残されないように、周りの人たちは特に気をつけてあげてください」
情報番組のコメンテーターがもっともらしく語っているのを耳にするたびに、
「ウチの老父母は弱者なのだろうか……」
納得のいかない感情が胸底からわき上がってくる。