1ページ目から読む
4/4ページ目

高齢者は弱者なのか…

 あたためるだけで食べられるハンバーグとおでん、チルドの焼きそばとうどん、バナナと5個入りのバターロールを2袋、1種類のみ置いてあったヨーグルトと牛乳を購入し帰宅。要した時間は2時間45分。それでも、スーパーにまで辿り着けない人や、未だに停電中の家庭を考えればありがたいなんてものではない。

 これで、4、5日持ち堪えることができるだろう。

 買ってきた食品を冷蔵庫へしまっていると、

ADVERTISEMENT

「ほっつき歩いてる暇があったら、早く電気屋に電話しろ!」

 老父がかみついてくる。

 ほっつき歩いていたとは聞き捨てならない。

「何度言ったらわかるの? ウチはたまたま電気が通ったけど、千葉県中がまだ停電してるんだよ。食べ物を確保するのだって本当に大変なんだから、少しは大人しくしててくれる!」

 分からず屋のクソじじいに関わったところで時間の無駄。言うべきことだけを言うと、

「早く電気屋へ電話しろって言ってるのが聞こえねーのか。早く直してもらわねーと相撲が観られねーだろ」

 懲りずに怒鳴り続けている老父を無視して2階へ駆け上がった。

 世の中が大変な状況に陥っていようがいまいが、自分のことしか考えていないのは、何も老父だけではない。

「このヨーグルトおいしくない」

 翌朝、階下へ下りていくと、ロールパンを頰張っていた老母が宣った。

 はあ……。今、何とおっしゃいました?

 このヨーグルトを手に入れるために私が要した労力がどれほどだったかを、この人は全くわかっていない。

「そうですか。おいしくありませんか? だったら無理して食べていただかなくても結構ですから」

 嫌みたっぷりに言って溜飲を下げる。

「緊急時、高齢者などの弱者が取り残されないように、周りの人たちは特に気をつけてあげてください」

 情報番組のコメンテーターがもっともらしく語っているのを耳にするたびに、

「ウチの老父母は弱者なのだろうか……」

 納得のいかない感情が胸底からわき上がってくる。