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「練習が終わって強制的に酒を飲ませるのはもちろん、セクハラ発言をしたり、太ももや顔を触るなどのセクハラが常習的に行われていた」

「飲み会が終わった後もカカオトークや電話で連絡をとってきて、『活動を続けたいなら私の前で這いつくばれ』『(言うことを聞かないと)殺してやる』などの暴言をあびせてきた」

「飲み会を拒否すると、『次のアルバムはない』と言ったり、言うことを聞かないと『次のアルバムは10人組だ』といって脱退をチラつかせて脅迫した」

「全メンバーが強い不安感を抱いたりパニックの症状が出ており、精神科で治療を受けている。ハイトーンの女性の声が聞こえるだけでビクビクしてしまう」

 メンバーたちは「商品ではなく人として尊重されたい」「今回のことが夢をあきらめない世の中になることに少しでも役に立ってほしい」と訴訟の意味を伝えている。

いまだに新しい所属事務所は見つからず…

 その後、2023年1月に裁判所は仮処分申請を受け入れ、OMEGA Xとスパイアエンターテインメントとの専属契約は解除された。ただ、活動を再開したOMEGA Xはいまだ新しい所属事務所を見つけられずにいる。

 現在も活動に必要な諸経費はメンバーの両親らが私費で充当しており、スケジュールは所属事務所を一緒に脱退したマネージャーが管理するなど、人的・金銭的側面で現実的な困難に直面している。

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 韓国メディアの報道によると、事情がどうであれ「内部告発者」という印象がかぶせられたため、業界では彼らと契約を申し出る会社がなかなか現れないという。

 加えて、スパイアエンターテインメント側はOMEGA Xの2年間の活動費として90億ウォン(約9億円)を使ったと主張しており、一人当たり3億~4億ウォン(約3000万~4000万円)の未精算金を求めていて、これを巡る法的紛争が予告されている。救いの手を差し伸べる存在はまだ現れていない。実に苦い結論だが、ショービジネス業界がいかに徹底的にビジネス論理で動いているのかという現実が浮き彫りになっている。

 アイドルの叫びに沈黙したと批判される日本社会に反して、韓国社会はアイドルの勇気に拍手を送りながらすぐに無関心になってしまった。不公正な契約や過度な労働搾取、パワハラなどで人権を蹂躙されても「慣行」という名の下に沈黙を強要……。舞台の上で輝かしく見えるアイドルの裏面に、業界の厳しい現実が存在している。