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 このころの僕は正直楽しければなんでもいいし、学校や社会なんてどうでもいいと思っていた。

 ある夜、いつものように仲間と走っていたときに、大事件が起きた。

 走っている僕らのなかに、見慣れない集団が割り込んできた。よく見ると、どこかの右翼団体のメンバーのようだ。

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「返さんかいコラァ!」

 とか、そんなことをこちらに言ってくる。

 なんのことかまったく分からなかったが、当時の僕はとにかく暴れられたら理由なんてなんでもよかった。向こうが喧嘩をふっかけてきているのは明らかだ。それなら喜んで相手になってやろうということで、すぐに大乱闘が始まった。人が多過ぎて、誰が敵で誰が味方かもよく分からないような状態だった。

 この時の喧嘩で僕は相手に向かってバットを振った。本当は怖くて目をつぶって振ったのだが、それが相手の頭に当たって怪我をさせた。そのことがのちに、無茶苦茶やるヤツということで伝説になった。

「伝説のヤンキー」「ヤバいやつ」…いつのまにか独り歩きする噂

 噂はどんどん大きくなっていく。本当は怖くて目をつぶって殴っているのに帰ってきたら不良少年の中では英雄扱いだ。僕としては「帰ったら自分の周りの環境はどうなっているんだろう」と不安でいっぱいなのに、「伝説のヤンキーが帰ってきた」という態度でみんな接してくる。「ヤバいやつが帰ってきた」と言われれば、おれはそんなにヤバいやつじゃないのにと内心で思いながらも、大きくなってきた噂に勝たなければならない。

 同級生が相手にならないんだったら年上がターゲットになる。それも相手にならなかったら、その上へ、という感じでエスカレートしていく。自分と周りの人間がつくった噂が独り歩きして、それに負けられないという感じだった。

 このときの喧嘩で現場は荒れに荒れ、当然僕たちは警察に連行された。

写真はイメージです ©iStock.com

 捕まって詳しく話を聞いてみると、どうやら向こうは僕たちが単車を盗んだということで腹を立てていたらしかった。僕はまったく知らなかったのだが、仲間がどこかで右翼団体のバイクを盗んでいたのだ。「返せ」というのはそのことだった。非はこちらにあったわけだ。

 とにかく怪我人もたくさん出るほど大規模な事件だったことは間違いなく、この件がきっかけで僕は人生で初めて少年院に入ることになった。