「スワローズ研究所」とは、どんな番組なのか?
両軍合わせて11本塁打が乱れ飛んだのは、5月5日、神宮球場で行われた横浜DeNAベイスターズ戦でのことだった。長岡秀樹の今季第1号は、値千金のサヨナラホームランとなり、ヤクルトは10対9で乱打戦を制した。取って、取られてを繰り返した3時間48分の熱戦を目の当たりにして、しばらくの間、神宮球場の片隅で放心状態となっていた。
するとその瞬間、「長谷川さん、ナイスゲームでしたね!」と声をかけられた。ふと我に返って発言主の顔を見たものの、その人に心当たりはない。僕の困惑をよそに、その人は続けて言った。
「明日のスワローズ研究所、楽しみにしています!」
おぉ、そういうことか。実はここ最近、神宮球場に行くと、「スワローズ研究所、見ています!」「スワ研、楽しみにしています!」と声をかけられることが何度かあった。「スワローズ研究所」とは、スカパー!が制作している、ヤクルトファン向けの情報番組で、基本的に月に2回、神宮球場で試合が行われる日の試合前に配信されるものだ。
研究所の「所長」を務めるのは、球団OBの五十嵐亮太さんで、その隣にはNHK BS1の人気番組「ワールドスポーツMLB」のキャスターでもある山本萩子さんが控えている。山本さんは親子ともども、大のスワローズファンとして有名な売れっ子キャスターだ。
で、この僕は「研究員見習い」として昨年からちょこちょこ出演させてもらっていたのだが、今年からは晴れて「研究員」に昇格、(一応)レギュラーの一人として番組に出ることになったのだ。そして、今年に入ってからしばしば球場で「スワローズ研究所、見ています!」と声をかけられるようになったという次第である。
大乱打戦を制した5月5日の翌日には今シーズン3回目の配信を控えていた。そのため、先ほどの人は「明日のスワローズ研究所、楽しみにしています!」と「声燕」を送ってくれたのである。本当にありがたいことだ。
キャスターでもないし、タレントでもないし、いわゆる「演者」ではなく、あくまでも「ライター」であり、「ファン」という実に無責任なスタンスで番組に出ているので、まったくプレッシャーはない(笑)。五十嵐さんの解説を聞きながら、一般には公開されていない試合前練習を視聴者の方々と一緒に見て、MLBにも精通している山本さんから日米野球事情を聞く。チームが調子いいときには喜びをみんなで分かち合い、不調にあるときには苦しさや辛さをシェアしながら、希望の光を何とか見出そうとする。番組の持つ、緩やかで前向きなスタンスが実に心地いい。それがこの「スワローズ研究所」なのである。
「髙津監督ノックバット問題」とは何か?
昨年のことだった。視聴者の方から番組宛てに、こんな質問が届いた。
――練習中、髙津臣吾監督はいつもノックバットを持っていますが、監督はノックをすることはあるのでしょうか?
なるほど。バッティング練習を見守る髙津監督はいつもノックバットを持って、選手たちの動向を見つめている。言われてみれば確かによく目にする光景であるけれど、監督自らノックをしている姿を見たことはない。「面白い質問だなぁ」と思っていたところ、話の流れから、「長谷川さん、ぜひ今度、監督本人に聞いてきてくださいよ」と五十嵐所長に命じられることになったのだ。
内心では「困ったなぁ。限られた取材時間で、ノックバットのことなんか聞けないよなぁ……」と困惑していたのだけれど、生配信中の勢いもあって、つい「はい、わかりました!」と安請け合いしてしまったのである。そして、配信から数日後、髙津監督にインタビューする機会を得た。取材は滞りなく進み、最後のあいさつをする直前、僕は恐る恐る切り出した。以下、そのときの模様をここに再録したい。
――最後に一つだけ伺いたいんですけれども、練習中、監督はバッティングケージの後ろでいつもノックバット持っていますけど、自らノックすることはあるんですか?
髙津 ないです。キャンプのときに1回やっただけですね。
――ストレッチ代わりにノックバットを使って柔軟したり、腰掛け代わりにしたりしていますよね。何でノックバットをいつも持っているんですか?
髙津 練習中にゴルフクラブ持ってたらおかしいでしょ(笑)。なので、ノックバットを持っています。
――なるほど(笑)。でも、ボールとかグローブじゃないんですね。
髙津 いや、バットがいいですね、ストレッチにも使えるし。グローブを持っていても捕球することもないので(笑)。まぁ、ノックバット持ってたらノックするのかって言ったらそうでもないですけど、他の使い方があるのでノックバットを持っています。非常に必須アイテムなので、常に持ってますね。便利ですよ、ノックバット(笑)。