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小さな仕事であれば柔軟な就業形態が可能

 この『ほんとうの定年後』の主張に対して、読者の反応として多かったものは、ほっとした、安心した、ということのようだ。人生100年時代、長寿化という社会の流れの中で、メディアをはじめとして、とかく定年後の危機感を煽る言説が多い。しかし実態をデータで正確に把握でき、そのうえで小さな仕事で暮らしは大丈夫と告げてもらえると安心できるのだろう。また定年後に仕事への満足度や幸福感が上昇するというデータは、第2章の幸福感のU字型カーブと同じ現象を述べている。小さな仕事で幸福感が得られることに希望を見出して安心できるのかもしれない。

 定年後の仕事のあり方が小さな仕事でも大丈夫となれば、現職継続、転職、起業という3種類の選択肢が多様化する。そもそも現職継続、転職、起業という選択肢を考えた時に、無意識のうちに週5日間で、午前9時から午後5時まで働くようなフルタイムの就業を前提としていないだろうか。しかし小さな仕事であれば、時間や場所に縛られない柔軟な就業形態が可能であろう。そこで、本書ではフリーランスという第4の選択肢を付け加えたい。

「フリーランス」は多様性に富んでいる

 ここで読者には疑問が湧くだろう。起業とフリーランスは何が違うのか。そもそも、起業とフリーランスは、厳密には比較できるものではない。起業とは新しく事業を起こすという意味であって、就業形態を説明する概念ではない。それに対してフリーランスは就業形態のひとつである。この点を明らかにするために、以下の図表をご覧いただきたい。

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 この図表では、筆者がアドバイザリーボードに所属しているプロフェッショナル&パラレルキャリア.フリーランス協会(以下、フリーランス協会)が作成したものを、抜粋して簡易的に示している。まず働き方、つまり就業形態は大きく労働者と事業者に二分される。左側の労働者とは、雇用による働き方である。いわゆる正社員、派遣社員、契約社員、パート.アルバイト等が該当する。現職継続、転職という2つの選択肢を検討する時は、その前提としては雇用による働き方が中心になるだろう。

 これに対し右側の事業者とは雇用によらない働き方を意味し、全般的にフリーランスという呼称にあてはまる。図表を見てわかるとおり、フリーランスと呼ばれる就業形態の中が多様性に富んでいることがわかる。起業とは何か事業を起こすことであるから、事業を起こした後にはこの図表の中では自営に分類されるだろう。つまり、起業をあえて分類するなら、フリーランスの種類のひとつということになる。