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日本の職場の3割以上が55歳の労働者…いまから考えておきたい“シニアの働き方”の“選択肢”とは

『定年前と定年後の働き方 サードエイジを生きる思考』より #1

2023/05/17
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シニアの働き方にとって身近になるのは…

 ところがシニアにとって起業という言葉は、かなりハードルの高いものに感じられるのではないだろうか。すぐに思い浮かぶのは、高い専門性、優れたアイディア、豊富な資金、綿密な事業計画が必要だというイメージだろう。実際に成功するのは「身の丈起業」と呼ばれる資金などを最低限に抑えリスクをなるべく減らした起業だといわれるが、初めて起業するシニアが多いと思われるので、いずれにせよハードルが高く感じられてしまうだろう。

 他方、フリーランスの区分を眺めてみると、実はシニアにとってより身近な働き方が存在することがわかる。ちなみに偽装フリーランスは、本来は雇用として契約すべきところ業務委託契約を結んでいるものであり、是正すべき区分だ。常駐フリーはある特定の職場に常駐して働いているので、時間や場所の制約があり、労働者性も一部存在する。そうなるとシニアの働き方にとって身近になるのは、ギグワーカーと請負・委託の2区分なのだ。

定年前から副業フリーランスとして業務委託契約に慣れておく

 ギグワーカーというとウーバーイーツを思い浮かべる読者も多いだろう。しかしそれは、ギグワーカーのほんの一部にすぎない。シニアの働き方にふさわしいギグワーカーの種類は多様に存在するのだが、この点については後に詳しく述べる。そして請負.委託こそが、シニアの働き方にとっては現実的で身近な選択肢だと筆者は考える。

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 請負.委託という言葉も、慣れていなければハードルが高く感じられてしまうかもしれない。しかし、要するにプロジェクト単位の仕事を業務委託契約で行うことにすぎない。副業についての詳細は後に述べるが、多くは請負・委託で行われることが多い。本業と同じく、副業の就業形態も雇用であると読者は思われるかもしれない。ところが副業の場合、プロジェクトベースであり、遂行すべき業務の詳細が明確であることが多いため、業務委託契約がふさわしいことが多いのだ。つまりシニアにとっては、定年前から副業を行い、副業フリーランスとして業務委託契約に慣れておけば、定年後の選択肢としてのハードルは下がるのではないだろうか。さらに請負・委託を中心にフリーランスを行う場合、必要な手続きは主に個人事業主になるための開業届ということになるが、一定の手続きさえ踏めば、届自体は難しいものではない。雇用によらない働き方の選択肢は起業しかないと考えるのではなく、フリーランス全体を視野に含めることは現実的な対応ではないだろうか。

日本の職場の3割以上が55歳の労働者…いまから考えておきたい“シニアの働き方”の“選択肢”とは

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