睡眠時の学習に夢はどのようにかかわっているのだろうか。それを知るためにザドラとスティックゴールドは、一酸化炭素中毒などで脳深部の海馬が損傷した患者5名に3日間で合計7時間テトリスをしてもらった。
海馬は記憶にかかわる脳の部位で、ここが損傷すると、今朝何を食べたか、午後どこへ行ったかなどを思い出すことができなくなる。健忘の患者たちは、寝る時間になると自分がテトリスをやったことをまったく覚えていなかった。
ところがひと晩たつと、目覚めたときに5名中3名がテトリスの夢を見たと報告した。意識的な記憶が消えていても、無意識はテトリスをしたことをちゃんと覚えていて、それを夢で再現したのだ。――これは「テトリス効果」として有名になった。
夢を見た人ほど高パフォーマンス
次いで2人が指導する若い研究者が、夢を見ることが学習能力に影響するかどうかを調べた。被験者(先の実験とはちがって、脳に損傷を受けていない)はヴァーチャル迷路の課題を行なったあと、90分間の仮眠をとり、そのあとふたたび同じ課題に取り組んだ。
その結果は驚くべきもので、仮眠から目覚めたとき迷路の夢の記憶がなかった被験者は、迷路を脱出するまでの時間が仮眠後に1分半延びたのに対し、夢を見たと報告した被験者は反対に2分半短縮したのだ。
仮眠中に被験者を起こし、そのときに見ていた夢を報告させる追加実験でも、夢の効果は確認された。課題に関係する夢を見ていた被験者は、迷路の攻略を平均91秒短縮させた(成績が10倍ちかく上がった)。一方、迷路の夢を見なかった被験者の時間短縮は10秒に満たなかったのだ。
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