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「悪口を書いたノートをわざと忘れて帰った」同期のキングコングに嫉妬して…ドラマより“ヒドかった”山里亮太の人間性と訪れた“転機”

「悪口を書いたノートをわざと忘れて帰った」同期のキングコングに嫉妬して…ドラマより“ヒドかった”山里亮太の人間性と訪れた“転機”

ドラマ『だが、情熱はある』

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笑い飯と千鳥を見て受けた“衝撃”

 山里が彼らを初めて知ったのは『ガチンコ!』で優勝した足軽エンペラーをバカにしている奴がいるという噂だった。その噂に反発心を抱いていた山里だが、彼らが、自分も尊敬していたバッファロー吾郎主催の『ホームラン寄席』に出演したという話を聞き、興味を抱くようになった。そして、実際に目の当たりにした彼らのネタに衝撃を受けた。

 実際には、観客のウケはそれほどでは無かった。むしろスベってるくらい。

 しかし、山里は「おもしろい」と思った。「おもしろい」と思う人から、「おもしろくない」と思われている情けなさを痛感した山里はこれまででは考えられない行動力を発揮する。なぜおもしろいのか、を本人たちに直接聞くために、先輩の仲介で酒の席を設けてもらったのだ。「どうしたらああいうネタができるんですか」と。

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千鳥(吉本興業ホームページより)
笑い飯 ©文藝春秋

 彼らは言う。「自分が客席にいたとして、その自分が見て笑うものをやってるだけ」と。「僕が考えているものには、いつだって自分はいなかった、お客さんは何を言ったら笑うのか? ばかりを考えていた」という山里の意識が大きく変わっていった(※2)。

 そして、現在の相方であるしずちゃん(ドラマで彼女を演じているのは富田望生。「わかるー」などの彼女の口調が完璧に再現されている)に出会うのだ。

 第5話で持ち前の戦略性で見事、相方にすることを実現させた山里。第6話以降、やはりその高度な戦略性でブレイクを果たす経緯が描かれるはずだ。そして、キングコングに向けられていた山里の嫉妬心は、味方であるはずの相方・しずちゃんに向けられることになっていく――。

「しずちゃん」こと山崎静代 ©文藝春秋

 同期デビューのオードリー・若林正恭は「標準語のツッコミの歴史は山里亮太以前以後にわけられる」と評している。そんな若林と山里はやがてユニット「たりないふたり」を結成する。その際、渾身の漫才をした後も「あそこ、早めに入っちゃった!」などとひとり反省していたという。

「山里亮太は99%の成功があったとしても1%のミスに注目する。

 彼は、その1%のミスと今も毎日毎日格闘している。

 その1%を帰り道で反芻し、 苦悶する」(※5)

 山里は常に劣等感にまみれ苦しんできた。だが、実は誰よりも自分の才能を信じていたのは山里自身だったのではないか。山里が本当の意味で嫉妬している対象は「理想の自分」に違いない。だから、今や誰もが羨む立場になったとしても、彼の嫉妬心は消えることはない。その嫉妬心を原動力にして、唯一無二のツッコミとポジションを手にしていくのだ。

(引用元)

 ※1 『アメトーーク』2010年3月25日

 ※2 山里亮太:著『天才はあきらめた』

 ※3 『山里亮太の不毛な議論』2012年5月9日

 ※4 『山里亮太の不毛な議論』2019年2月20日

 ※5 『天才はあきらめた』収録の若林正恭による「解説」

「悪口を書いたノートをわざと忘れて帰った」同期のキングコングに嫉妬して…ドラマより“ヒドかった”山里亮太の人間性と訪れた“転機”

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