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能天気にパンツ一丁で野球帽を被って…8年間テレビに出られなかったオードリー、春日と若林の間の“大きなズレ”

ドラマ『だが、情熱はある』

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春日と若林のズレがブレイクに繋がった瞬間

「心の中で他人をバカにしまくっている、正真正銘のクソ野郎」こそが他人の目を過剰に気にするのだと若林は言う。そしてそれは自分のことだ、と(※2)。他人がはしゃいでいる姿をバカにしていると、自分がそうすることも恥ずかしくてできなくなってしまう。自分が好きなことも、他人の目が気になって楽しむことができなくなる。結果、「生きていて全然楽しくない」という精神状態になってしまう。

「自分の生き辛さの原因のほとんどが、他人の否定的な視線への恐怖だった。

 その視線を殺すには、まず自分が他人への否定的な視線をやめるしかない」(※2)

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 翻って春日は、物事を肯定的に見ることができる男だった。

「(春日は)自分に自信があって。特別、自己顕示するために自分を大きく見せる必要のないマトモな人間だと思う。 ぼくは、とことんマトモになって幸福だと思ってみたい。可能なら向上しつつ。ぼくは、春日に憧れている」(※1)

 かつて理想の芸人像を目指し、背伸びして近づこうとし、春日に「恥ずかしくねえのか?」と若林は努力を迫った。それが春日の幸せにつながると思っていたから。しかし、最初から春日は春日で幸せだった。

 若林はそんな春日の春日性を最大限引き出す「ズレ漫才」を生み出しブレイクを果たすのだ。そのスタイルを“発見”する経緯は痺れるものだが、それはドラマの6話以降で描かれていくだろう。

オードリー ©文藝春秋

 オードリーにとって地上波テレビ初冠バラエティ番組となったのは2014年にフジテレビで放送された『とんぱちオードリー』だ。そこでブリッジ的に行われたミニコーナーは、若林の指揮のもと、春日が体を張る「春日チャレンジ」という名のものだった。

「ステージが変わっただけでね。場所が学校じゃなくなったっていうだけで、なんにも変わってないな」(※5)と春日が言うように、その関係性は学生時代から同じだ。いや、芸人になってズレてしまっていたものが本来の関係性に戻ったに違いない。

 若林は、ずっと“春日チャレンジ”をし続けている。

(引用元)

 ※1 若林正恭:著『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込』

 ※2 若林正恭:著『ナナメの夕暮れ』

 ※3 『あちこちオードリー』2022年10月26日

 ※4 『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』2020年5月1日

 ※5 『オードリーとオールナイトニッポン 自分磨き編』

能天気にパンツ一丁で野球帽を被って…8年間テレビに出られなかったオードリー、春日と若林の間の“大きなズレ”

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