1ページ目から読む
4/4ページ目

「私たちは親からあなた方を奪ったわけで、この土地に住むのは何だか恐ろしくて不安です。一緒にここを去り、タナイス河(ロシアのドン川)の向こうへ移り住みましょう」

 スキタイの若者たちはこれにも「あなたの好きになさい」と答えました。そして、彼らは遥かな東方の草原世界に旅立っていったのです。

アマゾーンのその後

 アマゾーンを母、スキタイを父とし、女戦士の習俗を守ったサルマタイ人は、スキタイが滅び、古代ギリシャ世界が崩壊した後も生き延び続けました。ローマ帝国の末期には西方に戻ってきていたようで、傭兵として斜陽の帝国を支えました。

ADVERTISEMENT

 そして、西暦175年、時の皇帝はサルマタイ兵5000の精鋭からなる部隊を編成、混乱の極にあるブリタニアに派遣しました。片道切符だけ渡された決死隊のような任務でしたが、多くの女性戦士を含むこの兵団は、見事な戦い振りを見せブリタニア・ガリアに一時的な秩序をもたらします。

 彼ら彼女たちはその後もブリタニアに駐在し続け、6世紀にはサクソン人の侵略もはね返します。

 サルマタイ人たちはその後長い歴史のなかでブリトン人と同化したようですが、彼らのことを人々は決して忘れなかったようです。その活躍からあの宝石のようなお話たち「アーサー王の物語」が生まれました。

写真はイメージ ©getty

 だとすれば、第一章でお話しした、「すべての女が望むものは何か」という問いの答えを知っていたあの美しく聡明な魔女「ラグナル」もまたアマゾーンの子孫だったということになるのです。

引用・参考文献:
『The Lost History of the Amazons』(Gerhard Pöllauer,lulu.com,2010)
『The Amazons: Lives and Legends of Warrior Women Across the Ancient World』(Adrienne Mayor,Princeton University Press; Reprint edition,2016)
『プルタルコス英雄伝』(プルタルコス著、村川堅太郎編、ちくま学芸文庫、1996)
『歴史』(上・中・下)(ヘロドトス著、松平千秋訳、岩波文庫、1972~1973)
「THE WOMAN WHO FOUND THE LIVING AMAZONS」(WOMAN THOU ART GOD)
「theamazonwariorwomen:weretheyrealorjustamyth?」(GilianClive)

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。