1日10時間食べ吐きに費やしていた時期も
――当時の具体的な症状はどんなものだったのでしょうか。
永田 1日10時間、食べ吐きに費やしていた時期もあります。スーパーに入ると、彼女のスイッチが入る感じがわかりました。
――10時間というと、起きている時間のほとんどを食べて、吐く行為に費やしていることになります。
永田 想像しがたいと思いますが、本当に休みなく食べ続けて、トイレで吐いて、また食べてと、その往復が昼から夜中までずっと続くんです。
寿司、唐揚げ、ラーメン、カレー……特に決まったものはなく、スーパーでは目についたものをカートにどんどん入れているような感じで。「おいしいものでお腹を満たす」という一般的な食事とはまったく異なるので、すぐ食べられればなんでもよかったのかなと思います。
――普通ではない買い物シーン含め、間近で食べ吐きの様子を見るのは家族として大変辛かったと思うのですが……。
永田 もちろん辛いのですが、それと同時に、あまりに想像がつかない事態が目の前で行われていたので、ただただ呆然と見守るしかない、といった感じでした。
それともうひとつは、本人が「食べ吐きはたったひとつの私の部屋なんだ」と度々訴えていたんですね。食べて吐く行為が本当に彼女にとって大切なことなんだ、ということが “部屋”という表現で何となく理解できたんです。
小さいときに親の暴力を受けるなど、大変な人生を送っていたことを以前聞いていたこともあり、問題の根本がそこにあるのかもしれない、とも感じました。
引越しも「過食嘔吐」がハードルに
――過食嘔吐が激しかった2005年、当時の勤務地だった岡山から大阪への転勤が決まります。
永田 当時は一緒に外出していてもすぐ食べたい衝動に襲われてしまうので、長時間の移動は厳しい状況でした。そんな中、家財搬入などで過食嘔吐ができない時間が長くできてしまう引っ越しは非常にハイリスクだと気を揉んでいました。
そこで一計を案じ、事前にこっそりと不動産屋に話を付けて、荷出し後に休む時間をもらうことで食べ吐きのための時間を確保。万全な状況で引っ越しを終えることができました。