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「日本人ですごさを感じたのは細野サン。驚異的ですね」アカデミー賞を受賞した坂本龍一は、なぜ細野晴臣の音楽に愛着を覚えたのか?

「日本人ですごさを感じたのは細野サン。驚異的ですね」アカデミー賞を受賞した坂本龍一は、なぜ細野晴臣の音楽に愛着を覚えたのか?

細野晴臣ソロデビュー50周年♯1

2023/05/20
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 新たにメンバーに加わったのはベースの小原礼と、「すごくいいドラマーがいるから」と言って小原が加藤に紹介した高橋幸宏である。

©文藝春秋 撮影/榎本麻美

 高橋はそのときまだ二十歳で、武蔵野美術大学に在籍していたが、高校在学中に始まるキャリアは数年を数え、多方面で活躍していた。

荒井由実らとバンドを組んでいた高橋幸宏の立教高時代

 高橋がバンドの中心人物だった加藤と出会ったのは高校2年生のころ、友人の荒井由実や東郷昌和と一緒に、朝の情報番組『ヤング720』のアマチュアバンド・コーナーに出演したときのことだった。ザ・フォーク・クルセダーズで一躍時代の寵児となっていた加藤は、荒井が作曲した「マホガニーの部屋」(のちに「愛は突然に...」と改題され、彼女の作曲家デビュー作となる)を演奏する彼ら学生たちをひな壇の上から眺めていた。

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〈茶色の革のジャンパーを着ていて、髪がチリチリなロングで、すごく格好良かった〉(*7)と高橋は加藤の第一印象について語っている。

©文藝春秋 撮影/榎本麻美

 それから数年後、ロンドンに遊びに来ていた高橋がケンジントン・マーケットを出ると、偶然にも通りの向こうを加藤が歩いているのを見かけた。高橋が「加藤さんですか?」と声をかけたところ、加藤は「小原から話は聞いてるけど、君がそうなの?」(*8)と言って、帰国後すぐに高橋をバンドのメンバーに迎え入れた。

 高橋のミカ・バンドでの日々はこうして始まった。(#2へ続く)

引用
*1 『イエロー・マジック・オーケストラ(第2版)』アスペクト、2008年
*2 『Hot-Dog PRESS』講談社、1983年5月10日号
*3 『まだ夢の続き』河出書房新社、2006年
*4 『ライトミュージック』ヤマハ音楽振興会、1973年4月号
*5 『THE ENDLESS TALKING 細野晴臣インタビュー』筑摩書房、1992年
*6 『HOSONO BOX 1969-2000』RE-WIND RECORDINGS、2000年
*7 『心に訊く音楽、心に効く音楽 私的名曲ガイドブック』PHP研究所、2012年
*8 『TOKYO ROCK BEGINNINGS』河出書房新社、2016年

細野晴臣と彼らの時代

雄介, 門間

文藝春秋

2020年12月17日 発売

 

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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