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「お父さんが可哀想すぎる!」小笠原道大の娘である私がドラゴンズファンになった“家庭の事情”

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/06/19
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 2015年9月21日、高校2年生だった私はナゴヤドームにいました。

 5番ファーストで試合に出場した父の姿を見ても、まだこれからも出続けるような気がして、ちっとも現実感が湧いてきませんでした。

 でも、大きな花束を持って見つめていた最後の打席。レフトに飛んだ鋭い当たりを亀井さんが好プレーでキャッチすると、「終わっちゃった」という思いが一気に溢れて、涙がとめどなくこぼれてきました――。

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2015年9月21日、プロ最終打席を終えて家族から花束が贈られ笑顔の小笠原道大 ©時事通信社

私の青春はドラゴンズとともにあった

 はじめまして、小笠原茉由と申します。現在はタレント、女優として活動しています。父は北海道日本ハムファイターズ、読売ジャイアンツ、そして中日ドラゴンズに在籍した小笠原道大(現・巨人三軍打撃コーチ)です。

 私は中日ドラゴンズのファンです。関東を中心にいろいろな球場でドラゴンズの試合を見続けています。好きなのは神宮球場です。とっても気持ちがいいですよね。10点差をひっくり返された試合も見てしまいましたが……。

 外野で応援しているファンの方に混ぜていただいて一緒に応援することもありますし、仲良くさせていただいている応援団の方もいます。最初、父のことは言わなかったのですが、引退試合で気付かれて驚かせてしまいました(笑)。だから今はオープンにしています。先日は父の引退試合以来、久しぶりにバンテリンドームで観戦しました。

 いつも「どうして日ハムファンでも巨人ファンでもなくて、ドラゴンズファンなの?」と聞かれます。

 たしかに父がお世話になった日本ハムと巨人にも愛着があります。記憶がない頃から、何度も鎌ケ谷や東京ドームに連れていってもらいましたし、レジェンドと呼ばれる選手の方ともお会いしたことがあります。どちらも私たち家族にとって大切なチームです。でも、ずっと応援しているのはドラゴンズなんです。森繁和さんとお会いしたとき、「君、どこのファンなの?」と聞かれて「ドラゴンズです」と答えたら、「渋いねぇ」とさらっと言われて去っていかれました(笑)。

©小笠原茉由

 なぜ私がドラゴンズを応援するようになったかというと――。父が巨人に在籍していた頃まで、家では毎日、部屋を真っ暗にして大きなスクリーンで試合を見ていました。父が打席に立つたびに母が大声で声援を送り、私たち姉妹も祈るような気持ちで見つめていました。2013年6月の代打サヨナラホームランは、故障でずっと2軍にいたときに苦しんでいたのをずっとそばで見ていたので、家が揺れるぐらい家族全員が叫んだのをよく覚えています。

 ところが! 父が中日ドラゴンズにFA移籍を決めたとき、3チーム目の移籍ということもあってか、母と妹がどこのチームを応援すればいいのかわからなくなってしまったようで、熱が冷めてしまったのです。私は「どうして応援しないの! お父さんが可哀想すぎる!」と憤慨し、このときからドラゴンズを応援しようと心に決めました。高校1年生のときのことです。母と妹はと冷たい反応でしたけど……(笑)。

 一からドラゴンズのことを学ぶつもりで、選手も応援歌も全部覚えてからドラゴンズの試合を見るようになりました。私の青春はドラゴンズとともにあったと言っても過言ではありません。

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