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 交際相手の男性は、宮本被告はプレゼントを渡すと言って稲田さんを店外に呼び出そうとしたり、稲田さんと同じ電車に乗ってお店に行こうとすることが度々あったと証言している。また、一緒に写真を撮る際に稲田さんに身体を寄せてきたこともあり、「やめてください。近すぎるのは嫌です」とはっきり咎めたこともあったという。

亡くなった稲田さん 遺族提供

 そして調書は、時短営業を強いられアルコール類の提供ができなくなった時期の話題に入ってゆく。

「ごまちゃんの営業時間が午後8時までになり、“ウェザー”を含めた常連さんばかりが来るようになりました。その頃から“ウェザー”の愚痴を聞く回数も、格段に増えました」

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「もう店にも来ないでいただけますか」

 そして、事件が起きる6月11日の4日前、6月7日の出来事について決定的な証言が飛び出した。

「“ウェザー”の誕生日を祝うために、新大阪の近くの飲食店にふたりで行くと聞いていました。その店にはカウンターがあって『目の前には大将がいるからふたりきりにはならない』と説明していましたが、『行くのは嫌やけど、行かなしゃあない』とも言っていました」

亡くなった稲田さん 遺族提供

 その食事が終わったあと、稲田さんは被告にこう告げたという。

「もう店には来ないでいただけますか」

 供述調書の読み上げは続いた。

「それまでにも2、3回は『店に来ないで欲しい』と伝えたと聞いていました。いくら“ウェザー”でも、誕生日に拒絶されたらきついだろうなと思いました。一方で、誕生日祝いの席ですらはっきり『いや』と伝えるほど、まあが切羽詰まっていたことも伝わってきました」

 ごまちゃんがオープンした2021年1月以降、稲田さんのスマートフォンには宮本被告からの大量のLINEメッセージや着信記録が残っている。LINEの文面の中には、宮本被告と距離を取ろうと苦心する稲田さんの心中が察せられるものも多い。そしてついに稲田さんは、宮本被告に決定的な「断絶」を通告したのだ。