ふたりとも20歳になる前に、家を出た。姉もひかりさんも携帯電話の番号を変えてしまったので、数年間は連絡が途絶えた。久しぶりに連絡がついたのは、共通の友人がいたからだった。
「その子だったか、その子の妹だったか忘れちゃったけど、うちの姉ちゃんと連絡とっているって聞いて。まあ、何かあったら連絡するように言って、って伝えたのかな。私と姉ちゃんは親のこと大嫌いだったから、そこは共通点がある。お互いを嫌いなわけではなかったし。
私は家を出た後、すぐに歌舞伎町で夜の仕事を始めて、新宿に住んでいたのね。姉ちゃんは何の仕事をしてたのかわからないけれど、当時は茨城か千葉に住んでて、『飲み屋で働きたい』って言うから、知り合いの店を紹介したんだよね」
ひかりさんはトークも秀逸、気配りと目配りもできる。客商売がうまい。今は都内で飲食店数店舗を経営するやり手だ。20代の頃からいわゆる太客もつかみ、順風満帆だったが、姉はそううまくはいかなかった。
「六本木の店を紹介したんだったかなぁ。でもいきなり入っても、歩合のお店でお給料が安いところだったから、最初からうまくいくわけがない。だから、私がお客さんを連れていって。当時は一晩で数十万使ってくれるお客さんがいたからね。それでもやっぱり大変で、店を転々として。『もう住むところがないから』って言って、うちに転がり込んできたんだよね。
私もいいよ~なんて言ってたんだけど、まあ、とにかくだらしない。何でもやりっぱなしで、皿は洗わないわ、洗濯もしないわ、それでいて光熱費も家賃も一切払わないの。1回も払わなかったと思う。完全に居候。最初は『払うよ』なんて言ってたのにね」
知らない女を勝手に連れてくる姉
多感な時期に家の中が大荒れで、家出しがちだったひかりさんとあかりさん。よく考えてみたら、同居していたという記憶がほとんどないという。そんなふたりが同居を始めたら何が起きたのか。
「姉ちゃんは子供の頃ちやほやされていたせいか、とにかくだらしないんだよね。仕事に行っても酔っぱらってベロベロになったりして。それでもお客さんは面白がって甘やかしちゃうから、どんどんどんどんだらしなくなっちゃって。
知らない女を勝手に連れ込んで、家に帰ったら誰かがいるのは日常茶飯事。私だって疲れて帰ってきてるのに、知らない人がお風呂場から『おはよう♪』って挨拶してくる。びっくりするし、私の家なのに何やってんだ、みたいな。たまにさ、共通のお客さんが家にいたりとかしてね」
ひかりさんの知り合いや友達と付き合い出したことも多々あったという。なんとなく気まずそうだけれど、あかりさんはおかまいなし。
「私の友達がうちに泊まりに来たとき、姉ちゃんとそういう関係になったらしくて。私は『あれ、昨日と雰囲気がなんかちょっと違うぞ』ってすぐ気づいたんだけど、言わなかったのね。
1か月ぐらいたって、その友達から『実は話したいことがあるの。あの日に……』って切り出されて。とにかく私の知り合いや友達に手を出してた。姉ちゃんは姉ちゃんで、友達から『ひかりはしっかりしてるのに、あんたは……』って比べられるのがすっごい嫌だったみたい。私の話をすると怒り出すんだってさ」