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 ひかりさんの優しさや懐の深さに甘えるのもわからなくはないが、一銭も払わない居候ならば、多少のうしろめたさや肩身の狭さなどはないものか。たまには家事を手伝ったり、何かおいしいものを買っておいたり、感謝の気持ちを伝えるものだが、あかりさんはそういう心配りや気遣いを一切しなかったという。

「もう、迷惑かけるだけ。一日中ずーっと誰かに電話かけてるから、うるさいの。朝帰ってこっちは早く寝たいのに。眠れないから余計にイライラしちゃって。今はもう規制されていて売ってないと思うんだけど、当時、携帯電話の電波を遮断する機械があったんだよね。それを秋葉原で買ってきて、姉ちゃんが電話かけ始めたら、ポチッてボタンを押すの。そうすると、本当に切れちゃうの。ざまあみろって思って」

数万円の電波遮断器を買ったことも…

 当時、数万円したという電波遮断機。とにかく姉のおしゃべりがうるさくて、強硬手段に出たという。ただし、ひとつ問題が……。

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「ボタンを押している間は、私の携帯も使えなくなるという。それも困るからやめちゃったけどね。そんなこんなで2~3年はいたのかな。私も疲れちゃったから、一緒に住めない、出ていけって言ったんだ。その後が、もっと問題でね……」

 ひかりさんに追い出された後、あかりさんはお客さんが持っているマンションの一室に転がり込んだという。5~6年はそこに住んでいたようだが……。

「そのお客さんはマンション1棟丸ごと持っていて、一部屋ぐらいいいよ、みたいな感じで貸してくれていたらしいんだけど、その人から私に連絡があって。『お姉ちゃんがいなくなっちゃったみたいなんだけど、ゴミの掃除だけするよう言ってもらっていいかな? もうお金はいいから』って。え? どういうことかと思って聞いてみたら、その5~6年、姉ちゃんは1回も家賃を払ってなかったみたいで。もうびっくり。『全額一括は無理でもちょっとずつで全部返します!』って言ったんだけど、『お金はいいから、部屋だけ片付けてくように言ってもらえるかな?』って」

 訴訟問題に発展しかねない話だが、あかりさんが訴えられることはなく、恨まれることもなかった。

「なんかうまいことやるんだよね、姉ちゃんは。普通だったら訴えられるとか、内容証明送られるとか、恨まれるとか、あるはずなのに、『いいよ、払わなくていいよ』って言われるんだから。別れ際もキレイっていうかね。なんかみんなから愛されるっていうか、そういう人をつかむのがうまいっていうか。そこもまたムカつくんだけどさ。ま、そうじゃないケースもあったけどね」(#2に続く)

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。