家賃を払わない、知らない人間を勝手に家に上げるなどが原因で、居候していた姉を追い出した、小津ひかりさん(38歳)。姉によるトラブルから一旦は解放されたと思いきや、さらなる衝撃が彼女を襲う。ひかりさんはなぜ200万円もの金銭的ダメージを負うことになったのか?

 コラムニストの吉田潮さんの新刊『ふがいないきょうだいに困ってる』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

妹の小津ひかりさん(38歳)はなぜ200万円の金銭的ダメージを負うことになったのか? 写真はイメージ ©getty

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トラブルメーカーの2歳年上の姉

 ある日、知らない番号から電話がかかってきた。

「なんか、姉ちゃんの元カノだっていう女性から電話がかかってきたのね。『もういいかげん、あかりの住所を動かしてほしい。別れて10年以上たってるのに、うちに置かれて迷惑だ』って。どうやら住民票を移していなかったらしいんだよね。別れた彼女宛の郵便物がずっと届くのも地獄だけど、私に言われてもねぇ」

 あかりさんは定住する家を持たないアドレスホッパーだった。そう書くと、なにやら素敵な、イマドキの若者の新しいライフスタイルのように聞こえるかもしれないが、あかりさんの場合、正しく言えば「転がり込んで居座る人」である。そのためトラブルも多く、迷惑を被った人からひかりさんに連絡が入ることもしばしばだった。

「そのときは姉ちゃんに連絡して、住民票を移させたんだけど。姉ちゃんは当時もう水商売はやめて、運送業の仕事をわりと真面目にこなしていたんだよね、新しい彼女と一緒に住んでいて。ただ、その彼女とは喧嘩が絶えなかったみたいで。瓶だか缶だかで殴られて、頭を何針か縫ったって言ってた。結局、別れたんだけど、その彼女の名義で借りた家に、最後は姉ちゃんひとりで住んでいたんだって」

 そこでまた新たな問題が起きる。あかりさんは数か月家賃を滞納していた。賃貸契約の保証人は別れた彼女の両親で、不動産屋から請求の連絡が行き、激怒しているという。あかりさんが謝って全額払えばいい話なのだが、ひかりさんに泣きついてきたのだ。お金の問題もあるが、要は「別れた彼女の親と話をつけてほしい」という。

 おそらく、あかりさん本人では話にならない、あるいは回収できないと悟った両親は、あかりさんの家族に直談判したいと申し出てきたのだろう。あかりさんも、ひかりさんを巻き込んで(というか、なすりつけて)なんとかしようと目論んだようで……。

 あかりさんの主張はこうだ。そもそも彼女に100万円貸しているので、滞納した数か月分の家賃を支払う義務はない、と。金を貸した証拠もあり、弁護士にも事情を説明したと言う。ひかりさんは推測する。

「たぶん、金を貸したのではなくて、同居中の生活費を払った程度のことなんだよ。付き合ったカップルが別れるときに、今までのデート代やプレゼント代を返せ、みたいな話、よくあるでしょ? 痴話喧嘩レベルだから、弁護士も動くに動けないんだと思う」