あかりさんのすごいところは、正面から借りて堂々と踏み倒す。みんなの甘えに乗っかりはするが、盗んだり持ち逃げしたりはしない。
「姉ちゃんは水商売を離れてもう10年以上たってるのに、その頃の知り合いとかお客さんといまだに連絡とったりもしていて。『そう言えば、最近電話に出ないんだけど、あかりは元気なの?』って私に連絡がきたりもする。もう投げ銭の件で、私はしばらく連絡しないって決めたんだけど、周りが連絡してくるんだよね」
お金を返してほしいと電話したが、あかりさんからは3か月連絡がなかった。
「どうやら神戸の彼女と喧嘩したらしく、最終的にはいろいろなところからお金を借りちゃってるみたい。消費者金融とかクレジットカードのキャッシングとか? 姉ちゃんが銀行から借りられるはずもないからね。それでプライドも何もなくなったみたいで……」
ついに禁じ手、親族に金の無心も始めた姉
親に絶望して家を出たあかりさんは、長い間、親や親族と距離を置いてきた。それはひかりさんも同じだった。ところが、貧すれば鈍するということが起きた。
「昨年、なんと母親が亡くなったみたいで。それを聞きつけた姉ちゃんは葬式に行って、親族に金の無心をしたらしい。『あかりが金貸してって言ってきても、返ってこないから貸さないほうがいい』って話になって、結局誰も貸さなかったっていうのを、後になって聞いたんだよね」
ひかりさんは葬儀にも行かなかった。そもそも余命僅かの状態だったことも知らなかった。なぜか、あかりさんの友達から知らされたという。「あんたの母親、もうすぐ死ぬらしいよ」と。
「母親はダメ男ばっか連れてくるけど、実家は資産家だったのね。私のことを子供だと思ってなかったというか、他人扱いだったの。お手伝いさんみたいな感じで接してくる。実際にお手伝いさんが何人かいたんだけど、本当にそのうちのひとりみたいな。一緒に住んでいても私だけ全然扱いが違ったからね。酒癖の悪い男が私を殴っていても、『あんたたちが悪いのよ』みたいな感じで、ホントに大嫌いだった。
でも、姉ちゃんはわりとかわいがられたの。かわいがられたっていうか、わがまま言って面倒臭いのであかりに言うのはやめよう、みたいな。いいや、あいつは自由にさせとけば、みたいな感じ。それでも、葬式の場でお金貸してなんてよく言えたなぁと思って」