「公募採用」のウソ
供述調書の中身を、詳しく見ていこう。
九州支社の人事担当課長は、局長の採用実態について、こう明かしていた。
「公募制としているが、実態は、局長会が候補者を探して育成し、その候補者が採用試験を受けることがほとんど。この実態は、郵政民営化の前後で変わっていない」
日本郵便では確かに、支社ごとにホームページ上で局長採用試験への応募を呼びかけている。だが、その内実は公募とはほど遠い。
人事担当課長の調書では、局長会推薦の候補者情報は、支社側が地区統括局長らから「内々に情報提供していただいている」と明かしている。推薦があっても「すべて合格させるわけではない」としつつも、局長会と無関係の応募者は「不合格になるケースが多い」「私の経験上は採用したことがない」と率直に語っている。
最終的な人事権限は会社側にあり、局長の採用も「100%言いなり」ではないが、推薦した候補者によほど大きな問題がない限りは、局長会の意向はそのまま反映されるということだ。
「局長を辞めるときは仕事を辞めるくらいの覚悟を持つように」
福岡県で2019年に統括局長となった局長も、福岡地検の聴取に対し、採用への介入について説明していた。内部通報者を脅したパワハラ局長の後任として、通報者への報復を主導した人物だ。
この統括局長によると、退職を予定している局長らに後任となる「後継者」を見つけさせたのち、地区局長会で候補者とその妻を面接し、決意の固さを確かめる。候補者と認めれば、現役の局長による研修を1年ほど受けさせ、「局長を辞めるときは仕事を辞めるくらいの覚悟を持つように」とたたき込むという。
局長会の推薦は支社側に非公式に伝えており、その結果、不採用となるのはごくまれで、面接をしくじっても「再面接」となる特例があることも明かされている。こうした「特別扱い」のルートで局長に就かせることで、新任の局長は「恩義」を感じて当然のように局長会へと入ってくる、と説明している。(#2に続く)
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