リアルに起きた身近な事件はいつも数字が高かった
45歳から事件レポーターを始めた東海林は還暦で退くまで現場に出向いた。一般企業であれば、管理職に収まる年代に朝から晩まで働いていた。
――体にガタは来なかったですか。
東海林 人生の中で、50代が一番元気だった。ろくに寝てないし、食べてもいないのに、全然辛くなかったわね。北海道で子供への虐待事件が起きた時、昼過ぎに「今から行って」と言われて、飛行機に乗った。
――いつも急な指令ですね。
東海林 着いたら、真っ暗になっていた。夜、雪道の中を歩きながらレポートする。近所の人は「子供の泣き声なんか聞こえませんでした。優しいお母さんですよ」と驚いている。でも、警察に取材すると、明らかにその家で事件が起きている。北海道は寒さを凌ぐため、家の壁が厚いから音が漏れない。その時初めて、他の地方と建物の造りが違うと知った。
――スタジオで単にニュースを読むだけだと、わからない事実ですね。
東海林 現場からレポートすると、リアルさが伝わるのよ。夫婦喧嘩して奥さんが旦那さんに灯油を被せた事件があった。すぐ現場に飛んで行って近所の人たちにインタビューした。次の日、毎分の視聴率が出たら、それが一番良かったの。リアルに起きた身近な事件はいつも数字が高かった。
――やっぱり、気になるんですね。
ワイドショーには現場をレポートしてほしい
東海林 世の中はどんどん変わっていく。でも、どこかに置き去りにされたような事件ってあるわけ。ワイドショーはそういう問題を取り上げるべきなの。もちろん、平和で楽しく生きることが一番大事よ。だけど、自分のすぐ近くで悲惨な事件が実際に起こっている。それは対岸の火事じゃないと知ってもらいたいの。
――東海林さんのような事件レポーターがまた現れるといいですけどね。
東海林 今はスタジオで、新聞や文春の記事を元にフリップを作って説明するでしょ。それは自分たちの目で見た情報ではない。テレビ局が現場に行かせないから、レポーターも立ち場がない。個人情報保護法もできたし、いろんな事情があって昔のようにできないとは思う。でも、もう少し身近な事件を取り上げたり、現場でリアルな光景をレポートしたりしてほしい。ワイドショーは自分たちにしかできない役割を追求すべきよ。
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