国はあくまで自治体に使っていただくシステムを構築するだけ
今回の土佐市の事例では、政治の問題も明らかになっています。人口2万5000人ほどを擁する土佐市の市長・板原啓文さんは3期連続で無投票当選。減退する地方政治のテンプレみたいな状況になっています。
民主主義ですから、市長になりたいやつが何人か出てきて政策で争わない限り、一般論としてはなかなか政治は良くならんでしょう。市長は地元有力者のただの利益代表であっては困るわけです。それってゴッサムシティみたいなもんですから。田舎だけど。
人口動態が歪になり、地元経済だけではもはや回らなくなっているので、国家から降りてくる地方交付金やまちづくり事業や地域活性化事業に活用できる助成金をアテにしながら、何も育たない土壌にせっせと水をやるかのような事態になってしまっているのだとしたら残念なことです。ある意味、地方衰退する衰退すると叫んで無駄と分かってて合法的に公金チューチューして、やりたいようにやってるようなものですから、真面目に頑張ってるよそ者を追い出したら上手くいかないのも当然です。
また、最近の新型コロナや子ども関連の補助金事情でも地方の声を聴くことは良くありますが、そこでは「地元にもう助成の対象となるような子どもがほとんどおらず、子育て世帯が全員出て行ってしまった自治体」と、兵庫県明石市や千葉県流山市のように「周辺自治体から大量の人口流入が起こり子育て政策をどんどんやらないと市政が回らない状態となっている自治体」とが峻別されて行きます。
単に市長としてうまくやってるかだけではなく、近くに働き口となる大都市があり、通勤できる交通機関があって、そこに支持される政策が乗ればベッドタウンとして人口は増えるのですが、今度は団地村のように町の老化や財政との戦いが始まります。そう簡単じゃないわけですよ。
日本の地方行政では特にそうですが、我が国の政策上、国家が国民の情報を持っておらず、地方公共団体が住民に対して公共サービスを行うアプローチとなるため、子育て関連の補助金もコロナのワクチン接種も全部自治体がやり、国はあくまで自治体に使っていただくシステムを構築するだけの仕事で終わってしまうのが実情となります。
国も頑張って検討したり予算組んだりしてるけど、実際に住民と向き合って汗をかいているのは都道府県や自治体にお勤めの地方公務員の皆さまなんですよ。マイナンバーでも高齢者福祉でも、主役はあくまで自治体なんですよね。
地域産業のため外国人労働者を受け入れたら
人口が増えて日本全体が若く成長しているうちは国が政策を決め、自治体がその土地柄にあった形で物事を実行するという流れで良かったのでしょう。
しかし、人口が減り、高齢化が進み、地方経済が衰退して地域社会の流動性がなくなることで意思決定者が昔から住んでいた爺さん婆さんばかりになると、これは仕方がないこととはいえ、地域の閉塞感はどんどん強まっていきます。そこへ、地域産業を守るために低賃金で働く外国人労働者を1000人、1万人単位で受け入れるようになっていくと、今度はそういう高齢者のコミュニティと、移住してきた外国人のコロニーとで軋轢が強まっていきます。