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「港はヤクザもいないし、プー太郎もいないし、皆技術者になりました」

 だが、経団連に殴り込みに行ったという逸話の背景も、霞が関や永田町が藤木さんの行動を半信半疑だったりするのも、藤木さんの言う「誤解」の根強さがベースにある。先人たちが背負ってきた時代背景を受け止め、それが今の行動につながっているのだろう。

山口組三代目組長・田岡一雄氏らヤクザの大物が一堂に会した集合写真

 ある時、藤木さんが10名ほどの港湾の幹部たちを前に言い切った言葉にも表れている。

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「先祖がね、おじいちゃんの代とか、何とかの代とかに、足を洗った人はいっぱいいるんだ。ね、その時代に。だから、俺たちはそれを復活させないの」

 この時のシーンは強く印象に残り、ぜひとも番組に生かしたいと思った。ただ、それだけでは港が辿って来た時代を描くことはできない。藤木さんの行動背景を伝える。どう映像化するか。

 藤木さんの会長室は、秘書室からつながっている。その秘書室の壁に白黒の集合写真が額に入ってかけられている。黒ずくめの背広姿の男たち総勢100人近くが、港を背にしてこちらを見上げている。ある時その写真を指さして、藤木さんが自ら解説し始めた。

父親の時代の港湾の幹部たち 最前列右から8番目から順に阿部重作、父・藤木幸太郎、田岡一雄 撮影:テレビ朝日

「これはすごいよ。これ。藤木幸太郎。田岡一雄」

 最前列中央に父親の藤木幸太郎氏。その左横に並ぶのが、山口組三代目組長、田岡一雄氏だ。一九六二年に藤木さんの父親幸太郎氏が藍綬褒章を受章した時の祝賀会。