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〈MMTを否定する日本の経済学者は時代遅れ?〉積極財政論がカルトではない理由

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース, 経済, ウェビナー, マネー

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雑な主張でMMTを邪魔するな

森永 私が言論活動をするようになってから5年ほど経ちました。当初に比べると、MMTの考え方は広まったと明確に言えます。支持する政治家は与野党関係なく増えました。そのため、「日本のデフォルト」や「積極財政によるハイパーインフレ」といった主張は、感情論ではなく理屈で批判されるようになりました。

 しかし一方では、MMTの議論は次のフェイズに進まなくちゃいけないと思っています。今までは、財政健全化や緊縮財政の側に針が振り切れていたから、“劇薬”のような極論めいた話で反対側に戻そうとしていました。実際、「金をばらまけばいい」とか「税金なんかいらない」など振り切れた発言をしている人たちがけっこういます。つまり、“清濁併せ呑む”ように雑な議論があっても仕方ない時期もありました。

MMTの議論を精緻にしていく必要性を語る中野氏 

 今はもう振り切れた針が戻り始めています。にも関わらず、雑な主張をする人がいると「やっぱりMMTとか言っている奴らは頭がおかしい」「積極財政はカルト」と言われてしまう。これから先は緻密な主張をしていかないとMMTの支持を広げていくのが厳しいと思います。

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 特に、世界的なインフレが起きている現在は、MMTに逆風が吹いています。事情を分かってない人が「積極財政をやったから今のインフレが起きている」と繋げて考えてしまいがちだからです。しかし、実際のところ日本は積極財政を全然やっていません。

 このような誤解に冷静にちゃんとロジカルな主張をしていくことが支持を広げていくために必要です。今回のオンライン番組のタイトルには「〈反MMT論者〉を論破する!」とありますが、逆に積極財政を支持している人たちに「もっと緻密な議論をしたほうがいいんじゃないか」と提案をしていく時期にさしかかっています。

中野 確かにそうです。インフレが起きている現在、議論のレベルを数段上げる必要がある。だから、ちゃんと議論をしているときに雑な主張で横から邪魔をしないでほしい。ただでさえ誤解されがちなところをあの手この手で説明しようとしているんです。