1987年11月29日にバグダッド発ソウル行の飛行機がミャンマー沖で爆発し、乗客乗員115人全員が犠牲となった大韓航空機爆破事件。

 実行犯の金賢姫は逃亡途中に服毒自殺を図ったが一命をとりとめ、韓国に移送された後に「犯行の目的はソウル五輪の妨害だった」と告白した。

 彼女は死刑判決を受けたが、のちに恩赦となって釈放された。

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 そして、自分を取り調べた捜査官の男性と恋に落ち、さまざまな苦難を乗り越えて結婚した。まさに「禁断の恋」である。

 今回、彼女は「文藝春秋」に登場し、国家に翻弄され続けた愛と結婚生活について、ノンフィクション作家の谷上栄一氏のインタビューに初めて赤裸々に語った。

出会いは取調室で

 韓国政府が親北朝鮮政策をとるようになってから、金賢姫は親北派からの嫌がらせやバッシングに晒され続け、滅多にメディアに出なくなっていた。

 ひさしぶりに姿をあらわした金賢姫は、意外なことを口走った。

金賢姫 ©文藝春秋

「じつは2年前の2月に、旦那さん(夫)を亡くしました。もともと、心臓に持病がありましたが、亡くなる前日、急に『食べ物が消化できない』『体の具合が悪い』と言い出したのです。一晩様子を見ましたが、翌朝、大動脈瘤破裂で帰らぬ人になりました。64歳でした。

 私のことを誰よりも知り尽くしていて、私がひどいバッシングに遭った時には、旦那さんはいつも守ってくれました。突然の死にショックを受け、最初の1年間は何も手につかなかったのですが、ようやく最近、お話ができるようになりました」

――差し支えなければ、これまで匿名にしてきたご主人の名前を教えていただけますか?