新しい「性の公共」を作る――。坂爪真吾さんはこの理念のもとで、重度障害者に対する射精介助サービス等、革新的な視点から、現代の性問題を解決すべく奮闘してきた。最新刊で挑んだのは、思春期の男子が少なからず直面する“孤独と性”を巡る問題だ。「女性と付き合う意味が分からない」等、18歳の男子が抱くであろう性にまつわる11の問いに、著者が真摯かつ論理的に回答する。
「エロの文脈で捉えられがちですが、セックスは他者と繋がる作業です。他者と繋がるためには、自分自身と繋がる必要がある。そして、孤独という通過儀礼をクリアして、自分自身ときちんと繋がることのできた人が、社会と繋がることができるのです。とはいえ孤独を脱する方程式なんてものは存在せず、自ら設定した問いを自力で解く術を身に付けなければいけません。『自分の性は自分でデザインしようぜ』というメッセージを伝えたかった」
本書の執筆にあたり、坂爪さんは“18歳の自分”と徹底的に向き合ったという。15歳からつけていた日記を全て読み返すのは、「ある意味、悪夢のような作業でした」と苦笑する。
「当時は東大現役合格を強迫観念のように人生の目標に掲げ、独りで勉強する日々。恋人はおろか友人もできなかった。ちっぽけなプライドに固執して、窒息しそうなほど生き辛さを感じていました。一度は受験を放棄して、自殺を考えたことも……。決して自分語りが好きなタイプではないけれど、上から目線のアドバイスばかりでは読者の心には響きません。ならば私の実体験を挙げるのが早いと思ったのです」
若者向けの啓蒙書とあなどるなかれ。親世代にも有用なヒントが満載だ。例えば、「ネット上のアダルトコンテンツに下半身を支配されている気がする」という悩み相談には何と答えるべきか? 我が身に引き付けて読んでほしい一冊だ。
「スマホが普及した今『ネットを捨てて街に出よう』という提案は無意味です。ネットポルノの牢獄からの脱出は不可能かもしれないが、その牢獄を逆手に取って他者や社会と繋がる道を模索する方がよほど建設的ではないでしょうか。
性教育といっても、大人が知識不足ゆえに性を語れないことが多々あります。また、家庭や学校が性教育を全面的に引き受けるのも現実的ではない気がする。私はNPOとして、その役割の一翼を担っていきたいと考えています」
『孤独とセックス』
「同性に胸がときめく自分に戸惑っている」「包茎であることがコンプレックス」「不特定多数の相手と交際しているが、誰とセックスしても虚しいと感じる」など、多感な18歳の男子が直面するであろう“孤独と性”にまつわる11の問いを例示。著者自身の思春期エピソードをふんだんに織り交ぜながら回答する。