1ページ目から読む
2/4ページ目

 ジミー・サヴィルは英国で「伝説の男」と讃えられてきた。1926年生まれのサヴィルは、炭鉱労働者やプロレスラーなどの職を経て、60年代にDJとして頭角を現すと、すぐさまテレビ番組の司会者として抜擢される。BBCの長寿人気番組『トップ・オブ・ザ・ポップス』の司会を42年も務めたほか、少年少女の夢を叶える人気子供番組『ジムにおまかせ』など多数の番組の司会を務めていた。

 ブロンドの長髪に奇抜なサングラス、カラフルなトラックスーツ、それに葉巻がトレードマークのサヴィルは明らかに「変人」だったが、明るさと人懐っこさ、巧みな弁舌と労働者階級出身の気安さなどから爆発的な人気を得る。視聴率はトップ、視聴者数は2000万人、BBCに届く手紙は25万通に上った。

©時事通信社

「聖人」の知られざる“裏の顔”。90年代から告発は続いていたが…

 お茶の間の人気を得ると同時に、サヴィルは病院での慈善活動を開始する。いくつもの大病院でポーター(患者の移動に特化したスタッフ)や救急隊の仕事をこなすようになったのだ。

ADVERTISEMENT

 寄付活動も盛んに行った。特に災害で崩壊した脊髄損傷センターの再建に尽力し、3年足らずで1000万ポンド(約50億円以上)も集めてみせた。日本でも知られる「24時間チャリティーマラソン」を始めたのはサヴィルである(余談だが彼の自伝によると2台のターンテーブルとマイクを使用した初めてのDJでもあるらしい)。ある人は彼を「聖人」と呼び、ある人は「キリストとサンタクロースを掛け合わせた存在」と呼んだ。

 ザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズらとも広い交流を誇るサヴィルが、特に親しくなったのがチャールズ皇太子とダイアナ妃、そしてマーガレット・サッチャー首相だった。

 チャールズは大衆を知り尽くしたサヴィルに何かとアドバイスを求めるようになり、ダイアナはサヴィルと2人きりで病院を訪れるようになった。サッチャーは国の税金に頼らない彼の実行力を讃えて、「ナイト」の叙勲を繰り返し推薦した。90年、ついにサヴィルはナイトの爵位を受勲。「英国の偉人」となったサヴィルは無敵の存在となった。