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 サヴィルは病院のベッドに横たわっていた少年や少女たちに性的暴行を加えていた。脳に損傷があって意識のない少女の身体も弄んでいた(ドキュメンタリーでは触れられていないが、もっと酷い行為も目撃されている)。病院には協力者たちがいた。わざわざサヴィルの部屋まで少年少女を連れていくポーターたちがいたのだ。

「耳をふさいできたのでは?」

 BBCは隠蔽していたことを公表。サヴィルと一緒に働いていたプロデューサーたちはニュース番組のインタビューで「耳をふさいできたのでは?」と問い質された。BBCの有名な司会者、アンドリュー・ニールはこう語る。「我々マスコミは国民を裏切った。彼を捕まえず、真実を見つけられなかった。だが国民も自分自身を裏切った。国民が彼を作った」

 世論は大きく変わった。警察はサヴィルを“捕食的性犯罪者(predatory sex offender)”と定義した。BBCによるジャニー喜多川氏のドキュメンタリー番組のタイトルがここから採られていることは容易に推察できる。

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豪華な墓石も撤去されたイギリス。日本は…?

 2016年までに400人以上の人々がサヴィルに性的虐待を受けたと名乗り出た。被害者の年齢は5歳から75歳に及ぶ。被害者たちは告発をすることによって「心が軽くなった」「自分を好きになった」と口にする。一方、「あの頃は良かった」と刻まれたサヴィルの豪華な墓石は撤去された。

 ジャーナリストが告発者を支援し、警察が大規模な捜査に乗り出し、マスコミはこれまでの忖度と隠蔽を告白し、加害者の名誉は完全に失われた(財産も凍結された)。これがジミー・サヴィルによる性加害問題の顛末である。

 サヴィルの被害者は400人に及んだが、自身も性的虐待を受けたという元ジャニーズJr.の平本淳也氏はジャニー喜多川氏の性加害の被害者数を2500人以上と推計する。英国の事例を知った上で、日本でこの問題がどのような推移をたどるのかを今後も見届けていきたい。