通っていた学校名も実名で報道される
「自殺事案の場合はガイドラインである『子供の自殺が起きたときの背景調査の指針』があります。私たち遺族は学校側からは説明されませんでしたが、『指針』を遺族へ説明しているかを調査するなど、改善できる点は見直すとのことでした。不適切指導の実態調査についても、方法を含めて、検討していただけるとのことです。
また、警察庁は、自殺統計原票の項目に『不適切指導』を入れることを検討したいとの話もありました。さらに、CDRは、自殺を含めて調査し、その検証のあり方も検討するとのことでした。JSCの課題についても、まずは実態の把握をすすめていくということでした。全体的に、前向きに検討していただける印象です」(同前)
一方、加藤さんは、通っていた学校名も「城北中」(板橋区)と報道された。そのため、碧さんの名誉回復につながったのでは、と受け止めている。
「実名にものすごくこだわっていただけではないのですが、実名を出し、学校名も報道されました。そのことで碧の名誉回復がなされたと思っています。(実名報道されることで)第2、第3の指導死が起きないように、悲しい思いをする人が出ないようにしたかったんです」(加藤さん)
学校側の説明を文字化して抱いた“違和感”
この6年間を改めて振り返る。
「『背景調査の指針』について説明がなく、こちらがお願いをしないと調査されませんでした。名誉回復のために実名を出したかったのですが、調査中は弁護士のアドバイスで出さないでいました。まずは調査が終わるまでと思っていましたが、言いたい思いはずっとありました。しかし、碧と同級生には迷惑をかけたくない。同級生たちが今春卒業したのを機に、実名で発信していこうと考えていました」(同前)
碧さんが亡くなった背景には不適切な指導があった。当日には、決めつけの指導が行われた。
調査委員会の報告書によると、ゲームセンターでの金銭紛失に関する苦情が学校に寄せられた。そのため、X教諭から碧さんに聞き取りが行われた。碧さんが関与を否定した。しかし、数分後、水泳部の顧問・Y教諭から、碧さんが関与していることを前提とした聞き取りが行われた。場当たり的にZ教諭も聞き取りに加わった。Z教諭は犯人扱いするような指導を行ったという。
報告書では「心理的圧迫と不安感、恐怖心を煽った」とされた。その後、帰宅途中に私鉄駅のホームから飛び込み、電車にはねられ死亡した。
「当初の学校の説明では『碧がお金を取った』と思わされました。信じがたいのですが、信じざるを得ませんでした。自責の念で亡くなったと思い込まされていました。しかし、碧の荷物をとりに行き、学校側の説明を文字化して、時系列で説明するようにお願いしました。そこで初めて違和感を持ちました」(同前)