完全なる日常が戻っていない今、ここ数年の指し初め式も人数を絞っているが、今年はどうなっているだろうか。
ここ数年抱えている大きな悩み事
私の一門では毎年お正月に研究会を行っている。
修業中の奨励会員を中心に、室田伊緒女流二段や中澤沙耶女流初段が私の教室に集まる。
そこでは大きな儀式がある。お年玉を未成年や修業中の弟子たちに渡すのだ。
他所の一門では珍しいらしいこの決め事。実は私自身、10代の頃に自分の師匠からお年玉をもらって嬉しかったので、それと同じ事を弟子にしているのだ。
しかしここ数年、大きな悩み事がある。それは「藤井聡太へのお年玉をどうするか」問題である。
まだ10代だから自分の一門の決まりでは迷わず渡すところ。しかし彼の毎年の活躍や実績は皆さんご承知の通り。そして今は将棋界序列1位の竜王である。
師匠の私、お年玉を渡すべきか渡さぬべきか、それが問題だ……ああ、ハムレットのように悩ましい。
大勝負とクスッとした笑いが楽しめる、見所満載の王将戦
さて、渡辺明王将に藤井竜王が挑戦する、王将戦七番勝負は1月9日から始まる。
タイトルに挑戦するごとに成長する感のある藤井竜王。百戦錬磨の渡辺王将相手に2日制のタイトル戦をどう戦うか注目である。
また王将戦は「勝者の嬉しい罰ゲーム」ともいわれる記念撮影が有名。対局に勝利した棋士は、その夜や翌朝に新聞掲載用の写真を撮るのだ。温泉につかったり浜辺で将棋を指したり、はたまたかぶり物をしたり……ファンは大勝負とクスッとした笑いを楽しめる。見所満載の王将戦なのだ。
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このエッセイは『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常』(文藝春秋)に収録されています。週刊文春連載を待望の単行本化。藤井聡太とのエピソード満載、先崎学九段との対談「藤井聡太と羽生善治」も特別収録して好評発売中です。
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