杉本一門による鼎談、後編では、藤井聡太竜王・名人のことを中心に聞いた。
藤井竜王・名人の師匠である杉本昌隆八段の綴る週刊誌連載をまとめた『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常』(文藝春秋)の帯には、師匠と笑顔で並ぶ藤井竜王・名人が写っている。クレジットとして記されているのが「室田伊緒女流二段」の名前だ。
師匠と藤井竜王・名人は「お父さんと息子という感じ」
――『師匠はつらいよ』の本の帯の写真は、岡崎将棋まつりで室田さんが撮影されたとか?
室田 イベントの休憩中になんとか笑わせようとして撮りました(笑)。
――帯用の写真を編集者から求められたんですか。
杉本 写真がないですかと言われ、撮れたら渡そうと。それでお昼休みに藤井竜王・名人に声をかけて室田さんに撮ってもらいました。そしたら、主催していた石田(和雄)九段も便乗して「私も!」と撮っていましたね(笑)。
――室田さんから見ると、師匠と藤井さんは、どういった関係に見えますか?
室田 お父さんと息子という感じはしますね。というのは、藤井竜王・名人も師匠に言うことは言うので。ちゃんと意見を言い合えるよい親子関係のような気がします。
――中澤さんはどうですか?
中澤 藤井竜王・名人が小さいときは、師匠がお父さんのように面倒を見ている姿はよく見ていました。そして最近、師匠にしっかりものを言ったりして、息子らしい一面もあるんだなと感じています。
小さい頃からセンスがある将棋を指していた
――中澤さんは、ずいぶん昔に藤井竜王・名人と出会っておられるんですね。
中澤 藤井竜王・名人が5歳のときです。瀬戸市にある藤井竜王・名人が生徒だった将棋教室の夏合宿でお会いしました。
――そのときの印象はありますか?
中澤 小学生もたくさんいたのですが、そのなかに小学生にも見えないような小さな子がいて、それが藤井竜王・名人だったのでとても印象に残っています。
――『師匠はつらいよ』の中に〈神から天賦の才を与えられた、小学一年生の聡太少年を見た衝撃。この日(竜王獲得)が来ることは私には既定路線である〉(「ライバルという存在」第30回)とありました。改めて、このときのことを教えていただけますか。