杉本 佐々木さんとは、順位戦のクラスこそ離れていますが、対戦成績も拮抗していますし四段の頃からのライバルと言ってもいい。立て続けの十二番勝負になりますが、新たな名勝負として藤井-佐々木戦というのが定着しそうな予感もあります。またお師匠さんが深浦康市九段ということで、私とも長い付き合いなので、深浦一門と杉本一門の図式を感じたりもします。
――現地で深浦師匠と会うこともありますか?
杉本 それはないんじゃないかな。まずこちらが現地に行く予定はないので。仕事で行くことがあれば行きますが、わざわざ見に行くことはありません。私はよく心配して見に行っているように思われているんですが、そんなことはなく、行ってるときはすべて仕事です(笑)。
――そうなんですか(笑)。心配して行ったことは……。
杉本 1回もないんですよ。全部仕事がらみ。
――棋聖戦の第1局はベトナム開催ですが、こちらは?
杉本 深浦さんに聞いたら「行かない」って言っていたので。深浦さんが行くんだったら、ちょっとくらい考えたんですけど。
室田 私、行きたいです。お仕事ないかな(笑)。
『師匠はつらいよ』の見どころは…
その後、室田女流は弟弟子の晴れ舞台であるベトナム・ダナンに現地入りしている。
また、このインタビューの前には、杉本門下である斉藤裕也四段の祝賀会があった。参加者50人くらいの小さな会だったが、奨励会を辞めた兄弟子が参加したり、藤井竜王・名人がビデオメッセージを寄せたりして盛り上がったという。
そんな様子を語る杉本師匠も、室田女流、中澤女流も楽しそうだった。
最後、『師匠はつらいよ』の見どころを聞くとこんなお答えをいただいた。
「将棋界のことが中心ではありますが、人生の楽しさを書いたつもりです。棋士は若く見られるって言うんですけど、それはきっと日々を楽しんでいる人が多いからじゃないかなと思っていて。そんなところを感じてもらえたらなと思います」
私たちが将棋界に惹かれるのは、人生を楽しんでいる人たちの姿が見られるからなのかもしれない。
写真=細田忠/文藝春秋
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