お米を買えないシングルマザーを猛批判、外国人労働者への非人間的な扱い…平然と弱者を叩く「絶望の国ニッポン」の不寛容

『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』より #2

河合 薫 河合 薫
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 しかも、報告書を取りまとめた経済産業局長が某ビジネス誌のインタビューで話した内容が残念すぎて、3秒ほど……言葉を失いました。

「(今が)名経営者になれるかどうかの分かれ目ではないでしょうか。我々はその手伝いが出来ればと考えています。その一歩です」(by経済産業局長)

 なんという高みの見物っぷりでしょうか。要するに、あくまでも「我々」は傍観者だと言い放ったわけです。僕たちは「絶望の国ニッポン」の一員ではないと言っているのです。

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 108ページにもわたるリポートをまとめるのは大変だったかもしれません。しかし、“上級国民”の当事者意識のなさこそが、「お手伝いしまっせ~」的底意地の悪さ、いや、のんきさが、ニッポンを絶望の国にしたのです。

ひとり親家庭の困窮を叩く人々

 経産省の報告書が公表されてから6カ月後の11月。絶望の国ニッポンを象徴する出来事がありました。全国のひとり親家庭を支援する団体でつくる「シングルマザーサポート団体全国協議会」が公表した調査結果を共同通信が、「ひとり親、米を買えず5割超物価高で、支援団体が調査」という見出しで報じたところ、「そんなことあるわけない」と大炎上したのです。

「浅はかな記事。マスコミが不安を煽りたいだけ」「インターネット調査って。ネット使えるヤツが米買えないのか? 家計簿チェックしろ」「嘘つくな!」「米買わないで、ほかの高いもの買ってんじゃね?」「米も買えない親に子育てする権利与えるなよ」「ひとり親世帯だけ給付金とか散々もらってるくせに、何言ってんだよ」「生活保護でも米くらい買える」「シングルマザー保護し過ぎ。米は嫌いだからパン買ってるってことだろう」「くそみたいな報道だな」などなど──、ここに書くのもはばかられるような罵詈雑言(ばりぞうごん)がSNSにあふれ、「シングルマザーで子ども3人育ててますけど? 米買えないなんてありえない」「米買えないは、さすがにない。ひとり親ですけど」といった“私もシングルマザーですけど何か?”的バッシングも飛び交いました。

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和も思いやりもない、日本人の「共感」の欠如

 念のために断っておきますが、「私だって大変だったけど、米くらい買ったわよ!」という主張を否定する気は毛頭ありません。しかし、件の記事を読めばわかる通り、「そういうことがあった」だけ。それまで日常品として買っていたお米を、「どうしようかな」と買うのをためらうことがあっただけです。なのに、そういった状況を想像することなく、「黙れ!」「嘘つき!」といった声がネット上にあふれました。