たまたま就職する時期が悪かったというだけで、「つじつまが合わないことだらけで腑に落ちないキャリア人生」を余儀なくされた、今を生きる40代。「40歳で何者にもなれなかった」と嘆く彼ら彼女らは、いったいどんな現実と向き合いながら生きているのだろうか。

 ここでは、健康社会学者の河合薫氏の著書『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目に続く)

写真はイメージです ©iStock.com

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50代前半の3人にひとりは役職なし

 管理職になれないからやる気がでないのか?

 管理職にならないと賃金が上がらないからやる気がでないのか?

 10年前の2013年9月、厚労省のある調査結果をきっかけに、こんな議論があちこちで巻き起こりました。「3人にひとりがマンネンヒラ」という結果に、深いため息が社会に広がったのです。

 この問題を大々的に報じたNHKによると、4年制大学を卒業した男性社員のうち50歳から54歳で、課長や部長といった管理職に就いていない人が55%と半数を超え、係長などの役職もない人は34%と、3人にひとりが「マンネンヒラ」だったそうです。さらに、管理職に就いていない人の割合は年々増加していて、20年前に比べると8.9ポイント増え、管理職の月給は役職のない社員のおよそ1.3倍も多くなっていました。 

課長は40代後半、部長は50代前半が最も多い

 番組では、「人件費の抑制や組織のスリム化で管理職を減らす企業が相次いでいる」と指摘。その上で、「社員が仕事への意欲を失う恐れがあり、企業にとっては大きな課題だ」という識者のコメントを紹介しました。

 いかなる企画や番組も、それを制作するディレクターのフィルターを通した作品になりますが、おそらく「えっ!! 半分以上もマンネンヒラかよ。マジかよ! やる気でね~」という視点がこのニュースの作り手にあったのでしょう。