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中学生同士の恋愛はどうなるのか?

 ここで「16歳まで性交同意年齢が引き上げられるってことは、中学生同士がキスしても両方犯罪になるの?」と心配する方がいらっしゃるかもしれない。 

 しかし、改正刑法には、同年代同士について、例外を設けている。 

 すなわち、13歳以上の者に、性交等又はわいせつ行為をしただけで犯罪が成立するのは、5歳以上年齢が離れている場合だけである。「5歳差要件」と言われており、ニュースなどでご覧になった方もいるだろう。これにより、13歳のジュリエットと、15歳のロミオの両方に犯罪が成立して、2人とも家裁送致ということにはならない。 

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 そうは言っても、働くこともできない15歳と、成人している18歳が、対等なのか。また、厳しい部活動では、上級生と下級生の間に大きな力関係の差があるケースは珍しくない。さらに、いわゆる「スクールカースト」が強固な学校では、同学年であっても、学校内で立場の強い人間の機嫌を損ねると、次の日からクラス中から冷たい扱いを受けることもある。 

「5歳差要件」があることで、中学生を性被害から守ることができなくなるのではないかと、衆議院法務委員会では、侃々諤々の論争になった。 

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 論争の結果、「『5歳差要件』は、5歳差があると『対等な関係』は有り得ないことから設けられたものである。5歳差未満であれば、『対等な関係』があるとするものではない。年齢差が5歳未満であっても、『経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること』など、不同意性交等罪の要件に当たる可能性があることに留意せよ」という内容の附帯決議がなされた。 

 また、「改正法施行後5年を経過した場合に刑法の見直しをせよ」という内容の附則もついた。 

 さらに、本改正には「中学生を絶対守る」という意図があるという「附帯決議の趣旨説明」がなされた。 

今回廃案になると、起こること

 今、参議院では、ほかの法律の審議のスケジュールに押されて、やっと改正刑法の議論に入ることができたばかりである。可決できずに会期が終わり、時間切れで廃案になるおそれがあるばかりか、岸田総理が会期末までの衆議院解散に踏み切るのではないかという見立てもあり、その場合も時間切れで廃案になるおそれがある。

 もしもこのまま廃案になれば、これだけ被害者に心を尽くした附則・附帯決議・附帯決議の趣旨説明が、文字どおり「ご破算」である。将来、再度刑法改正のチャンスが訪れたとしても、これらの附則・附帯決議・附帯決議の趣旨説明が復活することはまずないだろう。 

 また、改正が遅れれば遅れるほど、その間、救えたはずの被害者を救えなくなってしまう。 

 なんとしてでも今国会で刑法を改正しなければいけない。 

2023/6/13 16:53……読者の指摘により以下の記述を修正しました。
2P目「下限」→「加減」