現行刑法の性交同意年齢は、13歳である。
この中学年1年生の誕生日が2学期や3学期である場合、中1の夏休みには12歳である。現行法の性交同意年齢を下回るので、性交等をしただけで、この大学生に強制性交等罪が成立する。暴行脅迫は要らない。法定刑の下限は5年であり、時効は10年である。
しかし、もしも、この中学1年生の誕生日が1学期に来ていた場合、事情は一変する。中1の夏休みは、もう13歳である。
現行刑法では、性交同意年齢に達しているので、強制性交等罪が成立するには、暴行脅迫が必要である。しかも、暴行脅迫の程度は、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものでなければならない。ケース1の大学生は、暴行脅迫なしに性交をしているので、強制性交等罪は成立しない。
たとえ、中学1年生は性交に同意しておらず、この大学生が「同意がない」と知っていたとしても、結論に変わりはない。せいぜい青少年保護育成条例違反が成立して、罰金30万円というところである。青少年保護育成条例の内容は自治体によって異なるが、現実問題として3年で公訴時効にかかってしまう。
「え?!」と、目を疑った方も多いだろう。しかし、これが私たちの生きている世界の現実である。
刑法改正後、どう裁かれるか
同じケースが、刑法改正後の世界ではどうなるかを見てみよう。
改正刑法では性交同意年齢が、原則として16歳まで引き上げられる。このため、この中学生が13歳の誕生日を迎えていても、20歳が性交をしたら、20歳に不同意性交等罪が成立し、法定刑の下限は5年である。
しかも、改正法では、不同意性交等罪の公訴時効期間は、現行法の10年に5年プラスされて15年になった。改正刑法では、被害に遭った時に、未成年者だった場合は、18歳になった日から公訴時効が進行するので、33歳まで公訴時効期間が満了しない。
次に、もう少し被害者が年長のケースを見てみよう。