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ケース2:高校生が、部活動の顧問に性交される事例

【ケース2】 

 バレーボール部の高校2年生が、秋の大会前に、部活の顧問の教員から、体育館に居残るように言われた。当初は、顧問が、高校生の背後から密着してレシーブのフォームを直していたが、顧問の手が、高校生の胸部、股間等を触るようになった。高校生には、「これはおかしい。こんなところを触られるのは嫌だ」という気持ちがあったが、「抵抗して、出場選手から外されたら嫌だ」という気持ちから、抵抗しなかったところ、下半身の練習着をパンツとともに下ろされて、性交された。 

 このケースも、被害者が13歳以上なので、現行刑法では、被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行又は脅迫がなければ強制性交等罪は成立しない。 

 ただ、部活顧問と生徒という類型的な地位関係性を利用しているので、児童福祉法違反が成立する。学校の教員に対しては、重めの刑罰が科されるので、初犯でも実刑になり得るが、強制性交等罪の5年に比べれば軽い刑しか科されない。 

 これもまた「え?!」と目を疑うだろう。 

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 では、同じケースが改正後の刑法ではどのようになるかを見てみよう。 

刑法改正後、どう裁かれるか

 改正刑法では、不同意性交等罪の8類型の中に「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮していること」が挙げられている。この要件は、「地位関係性利用」とか「脆弱性利用」の場合を含むと言われている。

 ケース2は、教師と生徒という「地位関係性利用」と、被害者が未成年という「脆弱性利用」のコンボであるから、不同意性交等罪が成立して、法定刑の下限は5年となる可能性が非常に高い。かつ、被害者が33歳まで時効にかからない。 

 以上のとおり、刑法改正の影響は、中学生を中心とした未成年者に、ビビッドに現れる。