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「ゲームの話をしようよ」SNSで近づいた大学生(20)に中学生(13)が性交されても、現行法では“罰金だけ”…弁護士が解説する、「刑法改正後に起きること」

性犯罪に関する刑法改正が“成立危機”

2023/06/12
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 たった今、国会で、性犯罪に関する刑法が改正されようとしている。 

©iStock.com

法改正の主なポイント

 現行刑法の強制性交等罪が成立するには、以下の要件がある。 

「13歳未満の人に、性交等をした場合、性交等をした人には強制性交等罪が成立する」 

「13歳以上の人に、性交等をした場合、強制性交等罪が成立するには、暴行又は脅迫が必要である。しかも、同罪の暴行又は脅迫は、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要である」 

 これは被害者が、性交等に同意していないのであれば、激しく抵抗するだろうという思想に基づくものであるが、現実に性犯罪に直面した被害者はT・I(トニック・イモビリティ。「凍結反応」ともいう)などによって、ろくに抵抗ができないことがほとんどである。 

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 2017年6月に刑法改正をした際、暴行脅迫要件などについて、心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進することを求める附帯決議がついた。この附帯決議に基づく調査研究の結果、今年、性犯罪に関する刑法が改正されることとなったのである。 

 それに伴い、法律の名前が「不同意性交等罪」になる。 

 よくインターネットで「被害者の内心だけで、性犯罪が成立するのか」という批判を見るが、これは誤解だ。不同意性交等罪は、「暴行や脅迫」、「アルコールや薬物の摂取」、「同意しない意思を表すいとまを与えない」など8つの行為類型によって、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ」ることが必要である。 

 つまり「状態」こそが肝要であって、被害者の内心にフォーカスして「不同意」と判断しているのではない。 

 また、性交同意年齢が、原則として16歳に引き上げられることになる。 

 これらの改正によって、どのような影響がでるのかを、事例を挙げて解説しよう。 

ケース1:中学生が、SNSで知り合った大学生に性交される事例

【ケース1】 

 中学1年生が、夏休みに、SNSで知り合った20歳の大学生と、趣味の話で盛り上がり、「会って話そう」ということになって、塾帰りにコンビニエンスストアで待ち合わせた。話が盛り上がったので「もうすこし喋ろう」と、2人で近くの公園に行った。会話の途中で、大学生が中学生に性交を迫った。中学生は、まさか大学生が自分を性的な目で見ているとは思わなかったので、驚いて固まっているうちに、スカートの中に手を入れられ、パンツを下ろされて性交された。