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ディズニーが非白人キャラを増やしている、ビジネス上の理由

「ひとまず良好」な北米ヒットの一因には、公開前に激しい賛否を巻き起こした、ブラック・アリエル自体にあるかもしれない。前提として、アメリカの若年層は人種的に多様で、おおむね13歳未満のアルファ世代では非ヒスパニック白人が50%以下とされる。子どもをメインターゲットにするディズニーが非白人キャラを増やしているのは、マーケティング戦略として自然だろう。

 加えて、同国のアフリカ系コミュニティは「同胞の映画を特に観に行く層」と知られている。『リトル・マーメイド』にしても、プロモーション幹部は「黒人層を惹きつけ、すべての人を包括する」 戦略を公言していた。オープニングのチケット購入者のうち、黒人は35% とひときわ高い(同グループの人口比率は若年層でも10%半ば )。

中韓のレビューサイトでは公開前に低評価をつける荒らしが

 しかし、「大惨事」も起こってしまった。北米以外での国際成績が悪いのだ。ラテンアメリカ、ヨーロッパには良好な国もあるが、問題はディズニーリメイクの重要市場だった中国と韓国。『アラジン』が5000万ドル以上稼いだ中国において『リトル・マーメイド』は1000万ドルにも届かず終わりそうな無風っぷりだ。ちなみに、公開が遅かった関係で「アジア最後の希望」とされた日本では、中国の10日分売上を3日で上回る 約520万ドルの「堅調」デビューを飾った。

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 国際市場での低調は、ハリウッドに衝撃をもたらしたようだ。中韓のレビューサイトでは公開前に低評価をつける荒らしが報告されたため「予想以上の人種差別的反発」 だと驚く向きもある。

 しかし、映画ファンのあいだでは、ほかの理由も挙げられている。まず、ディズニーリメイクが飽きられてきた疑惑。さらには、国際市場で重要なスーパースターも不在だった。世界的知名度を誇る『アラジン』のウィル・スミスと異なり『リトル・マーメイド』のスターキャスト、アースラ役メリッサ・マッカーシーは北米人気に偏る。

 キャスティング、というか主人公のビジュアルに関しては、ノスタルジックなイメージ形成に影響したかもしれない。ディズニーリメイクで重要とされるのは、大衆の「思い出の作品」への愛着を刺激することだ。実写版アリエルはトレードマークの真っ赤な髪色ですらなかったため、ひとめ見ただけでは旧作と結びつきづらい(一応、現実的な「赤髪」になっているのだが )。