とにかく、追いかけよう。前線の僕、拓実、律(堂安)は途中出場で、先発したみんなに比べれば、まだ足が動くはずだ。
攻め込まれてはいる。でも、守備陣のみんなを頼もしく感じられている。純也くん(伊東)の運動量は、本当にすごい。きついはずなのに、アップダウンを繰り返して最終ラインまでサボらずに戻り続けている。薫(三笘)が球を持てば、またチャンスになりそうな予感がする。相手のセットプレーでは、航くん(遠藤)がシュートブロックしてガッツポーズを作る。大丈夫だ。
相手GKも上がってきたコーナーキック。クリアボールを拾う相手選手へプレスをかけに走り寄る。まだ終わらないのか。パスで逃げられて奪えなかったが、球が渡った先で拓実が相手に食らいつき、タッチラインに蹴り出した。
直後、笛が鳴る
勝った。
もちろん、勝利を信じて準備してきた。ドイツが強いのは分かっていた。ピッチの中でも、その手強さは肌で感じた。その相手に、本当に勝った。
大事な初戦で起用してくれた森保さん。この人、本当にすごいな
僕も、日本も、いろんなことを言われてきた。批判もたくさんあった。でも、やれるんだ、勝てるんだ、勝利に必ず貢献できるんだ。そう信じ続けて、ここまでやってきた。それが今日の結果につながった。
「よし。やったぞ」
同時に意外と、頭は冷静だった。とりあえず、今は思いっきり喜んどけ。そんな風に考えていた。
長友(佑都)さんに抱きつかれて、言われる。「すげえよ! お前、すげえよ!」
素直にうれしい。自分でも、持っているな、と思う。でもそれ以上に、すごさを思ったのは森保さんに対してだ。
自分は持っている、やれる。苦しい展開はむしろ好物、ヒーローになるチャンスだ。いつも、そんな風に考えてきた。だけど、いくら自分でそう思っていても、それを実現できる機会が来るかどうかはまた別の話だ。他の監督だったならば、負傷明けでW杯のメンバーに選んでいたかどうか。この大事な初戦で、信じて起用してくれていたかどうか。
確かにゴールを奪ったのは僕だ。ただ、その僕をピッチに送る選択をしたのは森保さんであり、その選択が生んだ結果だ。この人、本当にすごいな。心の中で言っていた。
「森保さん。やりましたね!」