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オフサイドか? どっちだ? ゴールを確信した瞬間

 線審を見る。旗は上がっていない。ピッチを見れば、相手は手を上げてノーゴールだとアピールしている。オフサイドか? どっちだ?

 観客席を見ると、サポーターが騒ぎ、揺れている。

 流れに身を任せて、スタジアムのトラックを走る。ベンチからは、みんなが飛び出して喜びを爆発させて駆け寄ってくる。次々に、チームメートに飛びつかれる。

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「ない!? ない!?」

 僕は繰り返す。

「ない、ない。ないないないないないっ!」。一番興奮していたのはタケ(久保建英)だ。 

浅野拓磨の逆転ゴールに一番興奮していたという久保建英 ©JMPA

 何度も首を振り、何度も言っている。

「GOAL」と、場内掲示に映し出される。その瞬間まで、VAR(Video Assistant Referee/ビデオ判定)が入るかもしれないと思っていた。ゴールを確信した瞬間だ。

 よっしゃ。

喜びと実感は、後からこみ上げてきた

 メインスタンド側にいた家族を見る。両親、弟と妹、小学生のころの恩師や、長く付き合ってきた友人が来てくれている。みんなに向けて、ジャガーポーズだ。

 チームメートや、スタッフと抱き合う。もちろん、森保さんとも。

 ゴールを決めたら、コーナーフラッグの方へ走っていって、ユニホームでも脱いで格好つけようと思っていた。でも、めちゃくちゃ格好つけて喜んだ後に、VARでオフサイドになったらダサいな。そんなことまで、その瞬間に考えた。自分でも引くほど、冷静だ。思っていた通りの喜び方はできなかった。ちょっと、もったいなかったかな。喜びと実感は、後からこみ上げてきた。

©JMPA

本当に勝った

 2‐1とリードしてからの時間は、本当に長く感じた。

 このまま守り切るぞ、守ろうというメンタルになる。

 もう限界だ。途中からピッチに入った身なのに、何度そう思ったことだろうか。

 アディショナルタイムが「7分」と示される。は? 長すぎる……。実はこのときまで、この大会は追加時間が長く取られているという傾向が頭に入っていなかった。

 心が折れそうになるけど、やるしかない。僕らの前でボールを回させる分には大丈夫だ。