みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えする連載「あなたのお悩み、脳が解決できるかも?」。今回は、「会社での先輩の行動」という難題に、中野さんが脳科学の観点から回答します。(全3回の1回目。#2、#3を読む)
◆ ◆ ◆
Q 先輩女性社員がオフィスに自らの趣味の作品を飾るのが、とってもイヤです ──31歳・会社員からの相談
――会社には私よりちょうど10歳上のお稽古事に熱心な先輩社員Aさんがいて、書道、水彩画、和紙人形など、自分の作品をオフィスに飾るんです。彼女は異動するとまず、異動先の部署に作品を飾り付けるのですが、先日Aさんが私がいる部署に異動になりました。せっかく白を基調としたシンプルでオシャレだったオフィスが、あっという間に色褪せた和紙人形だらけになってしまいました。毎日この景色を見ながら仕事するのがイヤでたまりません。うまい解決方法はないでしょうか。
ご相談を拝見して、なんだかほっこりしてしまいました。多くの動物が、自分の縄張りを主張するために行う「マーキング行動」をつい連想してしまったからです。
「マーキング」と言ってしまうと、「自分の縄張りは敵と争ってでも守らねばならない」と鼻息荒く戦闘モードになっている様子が思い起こされて、ややイカツイ印象があるかもしれません。
しかしながらその実態は、いわゆる「ねこのスリスリ」です。
ねこのスリスリには3つの理由があるということが分かっています。
(1)新しい環境が不安なので安心したい、(2)人間に自分の存在をアピールしたい、(3)仲間だということを確認する、の3つです。
ねこは、自分の縄張りに自分の知らないニオイがあったり、そもそも自分にとって新しい環境であったりすると、不安でいっぱいになって、スリスリしたくなってしまいます。