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テイラー・スウィフトは「ファン」を「都合のいい消費者」と勘違いして炎上

おぐら ミュージシャンがこの時代にどうやってお金を得るのかって、切実な問題ですよね。岡崎体育本人もそのことは表明していますし、チケットの優先販売もやらない、やりたかったのはプラスアルファのオマケを熱心なファンに還元することだと。

速水 つまりは、ミュージシャンを応援したい、才能に投資したいっていうファンのニーズに応えました! っていうことなんだけど、気合いの入ったファンは、お金どころか人生の一部を捧げているわけでしょ。ファンの想いをTポイントみたいにチャージすんな! っていう気持ちもわかる。

©iStock.com

おぐら でも、ホストクラブとかには明確なヒエラルキーがありますよね。お金を使った人だけが特別扱いをされるのは、いろんな世界で当たり前に行われています。

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速水 多分、ホストクラブに通うことと、ミュージシャンのファンになることは少し違うってことなんだと思う。最近『ファンダム・レボリューション』(早川書房)って本を読んだばかりなんだけど、これは「ファン」と「消費者」って違うんですって中身の本なの。

おぐら 「ファン活動」と「消費行動」は違うと。それはわかりますね。

速水 そうでしょ。ファンは消費者になりたいわけではなく、「参加体験」を求めているんだって。例えば、ファンの集まりに自発的に参加したり、好きなものをわざわざ店舗で購入したりするのが「参加体験」で、SNSでクリエイターの作品を広めるっていうのがまさにそれなの。それを「消費行動」として誘導してしまうのが失敗の元だと。

©釜谷洋史/文藝春秋

おぐら クラウドファンディングはまさに「参加体験」ですね。世界中のハイクオリティな音楽が聴き放題の定額配信サービスに月980円を払うよりも、つたない演奏だけど自分が気に入ったミュージシャンにクラウドファンディングで1000円を払うほうがずっとハードルが低い。ファン活動に投じる資金は「消費」とは別もの。

速水 実は、岡崎体育がブログで書いていたテイラー・スウィフトも、ファンがチケットを取りやすくするためのプログラムを採用して炎上してるんだよ。

おぐら それはどういう仕組みなんですか?

速水 これちょっとおもしろいんだけど「ブースト・アクティビティ」って参加によってテイラーのチケットがとれる確率が上がるという仕組み。テイラーのMVを20回観るとポイントがもらえるとか、あとはグッズを購入したり、知り合いを入会させたりするとポイントがもらえる。

©釜谷洋史/文藝春秋

おぐら 知り合いを入会させたらポイントって、アフィリエイトじゃないですか。一歩間違えばマルチ商法にもなってしまう。

速水 テイラー・スウィフトって、常にそういう仕掛けで最先端をやる人っていうイメージの存在でしょ? アメリカ版の西野亮廣みたいな。まあ、炎上上等ってのもあるんだろうけど。一番あれだったのは、スポンサーの宣伝をするとポイントをゲットできるっていう。

おぐら そこまでいっちゃうと、一般のリスナーは「We Are Never Ever Getting Back Together」って思いますね。

速水 ファンの弱みに付け込んだビジネスだって炎上した。これはファンを都合のいい消費者だと思った運営側の失敗だと思うけど。