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Twitterでガンを公表「善意の吐け口として消費されることが堪らなかった」

ガンプ 当時連載していた漫画があったので、「病気で休載します」とだけはアナウンスしていましたが、ガンについては親しい人にしか言ってませんでした。ただ、この時は仕事もできず抗ガン剤治療という“ガンの日常”しかなかったので、そこに触れないまま何かツイートするのは自分の中でも無理があるなと思っていました。

 その時描いた漫画もけっこう面白かったし、そうすると作家の性で読んで欲しいなという気持ちもあり、サテコも「いいじゃん」って感じだったので悩む必要もないかと思って公開した感じです。

――しかし、Twitterでガンを公表した結果、「善意の吐け口として消費されることが堪らなかった」と、返ってきた反応に憤る描写がありました。

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ガンプ 「わかります」とか「ガンは治る病気」みたいな同情だったり慰めの言葉がリプでついて嫌になってしまったんです。心配して言ってくれていることはわかります。でも、自分の生きるか死ぬかの日々を知らない人がカジュアルにネタにして、“いい話”として消費されていくことにげんなりしてしまって。それで一度Twitterもやめちゃったんですけど。

23話 ©ガンプ/小学館

――自分もこれまで安易な励ましの言葉を何回も言っていると思います。

ガンプ 仕事も好きなことも全部捨ててでも、とにかく生き残るという選択をしているのに、「また描いてください」と言われると、「こっちはそういう次元にいないんだよ……」となってしまって。

 かといって、本の中でも対応の仕方について正解は示していないし、個々人が、自分の家族なり愛する人が厳しい状況に置かれた時、それぞれが考えなきゃいけないんだと思います。

妻サテコさんの100点の回答

――妻のサテコさんからかけられた言葉で印象に残っているものはありますか。

ガンプ わざと「どうせ俺は再発して死ぬんだ」みたいなことを言ったら、しばらく考えて、「死ぬってなったら会社辞めるから、一緒に海外旅行に行こう」って返してきたんです。Twitterのように「絶対治るから!」みたいな励ましで返してきたらどうしようかと思いましたけど、僕が死ぬことを受け入れた上で最期まで一緒にいてくれるということだから、「コイツ、100点の回答やな」と(笑)。

――そんな試し行為をしていたんですね(笑)。

ガンプ でもサテコさん、僕の受賞を聞いた途端、仕事辞めちゃいました(笑)。全然、安泰じゃないって言ってるのに、「これで辞められる!」って。今は髪も銀髪になってイキイキ生活してます。

 そうそう、6月8日の贈呈式にサテコさんと一緒に行くんですけど、その直前に術後3年半検診の結果が出るんです。だから、俺はどっちの自分として贈呈式に出るか分からないんですよね。

――結果が出るまで生きた心地がしないですよね。

ガンプ 今までも何度も定期検査を繰り返して、「再発転移した自分/無再発の自分」って、両方考えています。今はずっと無再発の自分でいるけど、リアルに想像している分だけ、再発した自分はどこへ行っちゃうんだろう?みたいな感じもあって。うれしいというより「俺はどこにいるんだ?」を3年間繰り返しているような感覚です(※注:その後、ガンプさんに無再発の結果が出た)。