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「どうせ俺は再発して死ぬんだ…」大腸ガンになった漫画家に妻がかけた“100点の回答”とは

漫画家・ガンプさんインタビュー #2

2023/06/30
note

「ニューノーマル」とか「ウィズコロナ」とか言ってるけど

――抗ガン剤や放射線、手術といった治療が終わってもガンの日常って続きますよね。

ガンプ コロナになってから病気や死が身近になりましたよね。自分が今いる闘病中の世界が当たり前になったみたいな感じですね。

22話 ©ガンプ/小学館

――健康体の人と病気の人とで見える世界が違う、ということは作品の中で描かれていました。

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ガンプ 「ニューノーマル」とか「ウィズコロナ」とかカッコいい言葉でいいますけど、こっちからしたら「俺たちは前からずっと自粛しとるんじゃ!」みたいな。病気になったから偉いというわけではないし、無制限に甘えられるわけではないんですけど、「だけど、違うんだよ」という気持ちはやっぱりあって、世界が分断されていると感じていました。だからコロナになって、「ざまあみろ」って言葉が出てきたのかなって。

「作品の中の“ガンプ”を見て、面倒なヤツだなって思います」

――作品では、「バカヤロウ」「クソ」みたいな、このご時世に表現がためらわれるような黒々した感情がストレートに表現されていますよね。

ガンプ だから売れないんですよね。マジで売れてほしいんですけどね、賞も獲ったし。

――安易な慰めに対しては「バカヤロウ」だとは思うんですけど、逆に何も言葉がなかったら、それはそれで寂しくないですか。

ガンプ それはそうですね(笑)。自分で作品の中の“ガンプ”を見て、面倒なヤツだなって思います。しょうがねえなって。

 あれだけ「アホ、ボケ」って言ってたけど、オキサリプラチン(※注:点滴の抗ガン剤)を入れる時って本当にしんどいんで、自分を最大限甘やかしたいんです。だから、自分が連載していた作品名でエゴサして、自分の作品を天才だって褒めてくれてる投稿を見ながら点滴していました(笑)。

 なので、世間の反応に「バカヤロウ」って気持ちと「おかげで乗り越えられた」っていう正直なところを全部描いて、トントンにするつもりで今作ってるんです。

「どうせ俺は再発して死ぬんだ…」大腸ガンになった漫画家に妻がかけた“100点の回答”とは

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